ダーク・ファンタジー小説

Re: 夜明けのノア ( No.3 )
日時: 2020/01/20 19:02
名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)

「フラクタルにこんな屋敷があったんだね」

ノアは目の前に建つ大きな屋敷を見て驚いた。

「俺たちはここに住んでいる。お前は家に帰れないだろう。

部屋は幾つか空いている。自由に使え。服も準備しておこう」

中は清潔に保たれている。男二人が住むような大きさではない。

用意された服は随分と上品な服だ。水色のドレスだ。

「お前が望む真実は簡単には解けやしない。ゆっくり歩もうじゃないか

この新聞を見てくれ」

その記事、写真に乗っているのは轟々と燃え上がる自身の家。

これまた小さくさりげなく乗せられていた。

「お前の、家だろノア」

「そうだね…これもきっとアルカード市長が?」

「違うよノアちゃん。市長はここまで目立つことはしない。雇われた

誰かさんがやったんじゃない?」

ユミルはいつの間にかノアの後ろに立っていた。彼女の肩に顎を置き

右手でそっとノアの頬に触れた。随分と気に入られているようだ。

「この家を燃やした奴、関係してるんじゃない?市長さんと」

「そう考えるのが妥当だな。調べる価値はある…兎に手伝わせるか」

「ん?兎?」ノアが困惑しているのを余所に話はどんどん進んでいく。

黒い兎がぴょこぴょこと跳びながらやってきた。兎は人の形に

変わった。V系の雰囲気が漂う黒兎の青年。吸血鬼がいる時点で

もう兎に驚いてはられない。

「コイツはコニーだ。兎の獣人。仕事だ、エルドラド邸を燃やした

人物を特定し調べろ。今日からノア・エルドラドがお前の女王だ」

コニーと呼ばれた青年は頷いて外に出て行った。窓から彼が見える。

膝を曲げ、伸ばした瞬間あっという間に遠くに跳んで行ってしまった。

「アイツは脚力が強い。常人の首なら奴の蹴りで楽に折れるだろ」

「兎を初めて怖いと思ったわ…」