ダーク・ファンタジー小説
- Re: 衰没都市リベルスケルター ( No.9 )
- 日時: 2020/02/16 10:54
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: yVTfy7yq)
代肆話「幻実と現想の狭間で」
「………」
「ちょっと待ってよ!ここ何処か教えてくれるだけで良いから!」
現在茅種は、前回彼女を助けてくれた日本刀JKに現在地を教えてもらう為、件の日本刀女子を追っていた。最初はかなりゆっくり走っていたのだが、どういう風の吹き回しか現在はビルとビルを飛び交うパルクールをやっている。しかもあろう事か、件の少女はこちらをチラッと見た次の瞬間、走る速度を上げた。
「………!」
「あ!狩りごっこだね!?よーし、負けないぞー!」
遂に茅種が壊れたのか、奇怪な事を叫びながら走る速度を上げる。両者の距離が3mを切った辺りで、刀少女はビルとビルの間に飛び込む。無論そんな事は自殺行為に近いが、器用にビルの壁を蹴りながら降りて行く。
少女がこちらを見てドヤ顔かまして来たのが分かる。若干イラっと来た。
「野郎…さては出来ねえと思ってんな?」
茅種も同じ要領で、ビルの壁を交互に蹴りながら器用に降下する。隣に綺麗に着地すると、彼女が舌打ちするのがわかる。ザマぁ。
「……で、一体何の用?女が女相手にストーカーって恥ずかしくないの?」
「残念、私は同性愛者じゃないんで一応だけどイケメン彼氏いたんで、モテない女の妬み嫉みは他所でどうぞ?」
「首切り落とすわよ」
「やってみろ」
一色即発の空気になる事数十秒、刀剣乱舞しちゃってる刀剣女子が口を開く。
「貴方、ここが何処か知りたいって言ってたわよね?」
「うん、それがどうしたの?」
「………付いて来て」
そう一言告げると、刀剣JKは踵を返し歩いて行く。茅種は少し呆然と立っていたが、直ぐ様走って追いかける。歩く途中で、刀剣JKはこちらに振り向かず話し掛けてくる。
「そういえば貴方、名前は?」
「あ、私?私は雪宮茅種」
「チグサね…私はマイ、よろしく」
刀剣JKことマイに付いて行くと、新宿駅と思われる地下鉄の前へとやって来た。
「……ねぇ、この中に入るの?」
「当たり前でしょ、行くわよ」
若干不安な茅種をよそに、マイは堂々とした足取りで駅構内に入って行く。彼女が入って行くなら問題は無いと思うのだが、やはり知り合ったのが先程である以上、少しばかり疑いの念は抱かざるを得ない。駅構内を歩いていると、一人の青年が現れた。
「ただいま」
「おぉ、お帰り。結構遅かったんじゃ無い?」
「少しばかり手荷物が増えたもので」
マイはこちらをチラッと見る。すると、青年もまたこちらを見る。
「お、君がマイの言う手荷物かな?僕はマックス、彼女と一緒にここでとある研究をしているんだ」
「雪宮茅種です、あの…ここが何処か分かりますか?私、何も分からないんです」
マックスは口角を軽く上げ、茅種の問いに解を出す。
「ここは衰没都市」
「衰没都市……?」
「あぁ、東京であり東京ではない、もう一つの世界…所謂パラレルワールドって奴さ」
次回 代伍話
「人を殺す優しさ」