ダーク・ファンタジー小説

Re: 黒蛇殺しの鎮魂歌 6ノ赫 ( No.6 )
日時: 2021/02/06 20:30
名前: ひにゃりん (ID: PNMWYXxS)

ーーー???視点ーーー
…優しい家族。十分な富。そう、全部足りていた。

……………………高望みなどしなかったのに。

ーーーメリーーーー

朝、わたし達は工場から出て東に向かって歩いていた。
「聞き出した情報によると、リイアル村をさらに東へ行った先に
黒蛇が居るらしい」
村!?
聞き慣れない単語に、思わず反応する。
「村…ですか?」
「あぁ、とても大きい」
大きい村なんて、もっと無い。
「…驚きました。マギア戦争の後残った村はほとんど無くて、あっても都市を直す
材料のために壊されたと習ったんですが」
小さい頃からずっと、わたし達はマギア戦争について教えられてきた。昔起きた戦争。外国との間の
戦争で、マギアの乱用が原因だと。あの授業では随分嫌な思いをした。
「王の結婚相手がそこのご出身で、残されたらしい」
しばらく黙って歩いた後、わたしは口を開いた。
「なんだか…酷い話ですね」
リリカさんがチラッとこちらを見る。わかってる。こんなの、軽々しく言うことじゃない。
「みんな何か大事なものを失って辛いはずなのに、そういう恵まれた人だけが
優遇されるなんて…。やっぱり嫌です」
つい、言葉が溢れる。案の定リリカさんはこちらを振り向いて言った。
「そんなので、社会が廻るとでも」
「……っ、分かってます。でも、」
そこまで言ってから、口をつぐむ。
言葉が、出て来なかった。
全く話が合わない。けど、きっとわたしがおかしいのだ。
そのまま、何も言わずにわたしとリリカさんは歩き続けた。