ダーク・ファンタジー小説
- Re: 勇者として召喚されたけど俺YOEEEな件 ( No.22 )
- 日時: 2020/03/23 08:54
- 名前: 自宅の防人 (ID: X1kgwzZ6)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
夜の森は、基本的に暗い
明かりとなる月光さえ、木が遮るからだ。
木の葉の隙間から漏れる微かな月光が、地面を淡く照らす
夜行性の生物意外は基本的に眠り、風が草や葉っぱを揺らす音が木霊する時間帯
誰もが寝静まった夜の空に、どこまでも白い少女は一人輝く
『本当に熟睡してるなぁ……、むちゃくちゃ良い物を装備しておいて、中身は弱い。今代の勇者は手が掛かりそうだなぁ……、マカミもそう思う?』
少女は、困ったような笑みを浮かべながら、誰もいないはずの茂みに話しかける
すると、茂みから突然ガサッと音を立てて、一匹の犬が現れた
毛は茶色で、体の内側いかけて毛が白い、とても愛らしい動物
そう、柴犬である
尻尾をゆさゆさと揺らしながら白い少女の所に駆けつけると、
「わんっ!」
『……あっ!しーっ!……春樹が起きちゃう!』
「……ゎん!」
『ふふ、いい子。』
木の隙間から覗くことができる綺麗な満月を見ながら
少女はゆっくりと座りこみ、そばに来た柴犬の背中を優しく撫でる
しばらく、何も言わずに撫で続け、再び静かな時間が訪れた時、
少女はふと、口を開いた
『マカミは、今日、ずっと春樹の後ろを隠れながら付いてきてたよね?』
ビクッ
マカミという名の柴犬は、「えぇ〜!?何でバレたの!?」とでも言いたそうな顔で首をかしげた
少女は、その柴犬の可愛らしい反応に笑いながら続ける
『そんなに警戒しなくても、春樹は大丈夫だよ。君のこと、何度も心配してたし』
まぁ、同じくらい何度も忘れてたけどね……と続けて口から出そうになるの少女は堪える
柴犬はそのことを嬉しそうに、されど顔には出さないようにキリっと「ふ、ふーん」と余裕そうな顔を保った
『ははは、尻尾でバレてるよ』
マカミは、自分の尻尾が結構上下に動いていたのを知って恥ずかしそうに「くーん………」と鳴いた
そして突然顔を背け、白い少女に背を向けて丸まった。
拗ねたのだ。
『あぁ、ごめんって……』
少女は慌てて謝るが、マカミはぷいっと顔を背けたままだ。
少女は困った顔をしながら、話しかけた
『……うーん。まぁ、明日はできれば出てきてあげて?お願い。』
犬はしばらく無言だったが、やがて小さく「……わん」と鳴いた
少女は満足そうに『よしっ!じゃあまた明日!』と言うと、
再び、剣の中に吸い込まれるように消えていった