ダーク・ファンタジー小説

Re: 半死半生の冒険記 ( No.19 )
日時: 2020/03/31 13:13
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

作者コメント「フリック?知らない子ですね。」(すいません……ッ!)
後で人物紹介のトコも修正しときます……

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第12話「炎剣のバーン」



「?えっと……?」


赤い少年は、僕を指を指しながら腰に手をあてて言ってきた
「一緒に来てくれるってこと?」

「そうだ!感謝しろ!」


どこかくろ丸に似てる感じがするな………。
それはともかく、一緒に来てくれるのは有難い。
立て続けに断られて少し心が折れかけていたのだ。

「ありがとう、断られ続けて参ってたとこなんだ……。僕はあら……アレンッ!名前は?」
「俺はバーンだ!お前の使う武器種は何だ!俺は魔法剣だ!」

ドヤ顔で背中にかけてる剣の鞘を触る。


魔法剣?知ってる知ってる……本でよく見たよ。
……ダンジョンで手に入れることができる武器だっけ。

くろ丸が呆れたように訂正する。

『全然違うわい。ダンジョンで宝箱などに入っていることもあるが、別に人工的に作ることもできる。剣の素材となる物に魔力を通すことによって生まれた特殊な力が備わった剣のことだ。』

………くろ丸ってもしかして詳しい?

『僕ちんが何年生きてると思っている。軟弱な人間とはデキが違うのだ!』

はいはい。

「お前の武器種は何だと聞いている。……ちなみに俺は魔法剣だ!」

無視されたのが気に障ったのか、眉をひそめならもう一度聞いてきた

「あぁごめん。僕は短剣使いだよ」
「その腰にかけてる綺麗な短剣か、……まぁ俺の魔法剣のほうが凄いけどな!」

主張が激しいな。

「それは……凄いね。」
でもそれって大声で言っていいのだろうか。

『馬鹿だなこやつ、さっきから後ろの雑魚共が反応しておるぞ。』

お酒を飲みながらパーティらしき男の冒険者達がちらちらとバーンの背中の剣を見ている。
……よし、さっさとクエストこなして別れようか。絡まれてはたまったもんじゃない

「じゃあ、クエスト受注したし早く行こう?」

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木々が生い茂った森の中、整備された草のない道を歩く。
草むらならもうすでに周りにあるのだが、もう少し歩くと広い草むらがあるらしく、
そこでなら結構な確率で出会うことができるらしい。

「そういえば、その魔法剣ってどうやって手に入れたんだ?」

無言のまま一緒に歩くのもなんなので、軽く話しを振ってみる

「いや、これは親父がダンジョンで手に入れて、受け取ったものだ。あんま詳しくは言わないぞ。」
「へぇ、お父さん凄いんだね。ダンジョンってことはBランク以上の人だったの?」

「まぁ、な……」

Bランクともなれば、ある程度の魔物は倒せるので安定した生活を送れるはずだ。
実は結構裕福だったりするんだろうか。

「アロマラットはすばしっこい魔物だと聞いたけど、バーンは大丈夫か?その剣重そうだけど。」

普通の剣にしては全体的にでかいし、両手剣にしてはかなり細い。
魔法剣は扱ったことがないので詳しくないが、小さいアロマラット相手に大丈夫なのか心配だ。

「……ふっ、俺を誰だと思っている。炎剣のバーンにかかればネズミ如き丸ごと燃やしてやる!」

さっきみたいにドヤ顔しながら魔法剣を触っているバーン様にチョップをかます

「いてっ!何すんだよ!」
「森で迂闊に火属性の魔法を使うなボケ。」

というか、禁止されてなかったっけ。見つかったら即アウトなので釘を刺しておく。
葉っぱに燃え移っただけでも、この木と木の間隔が狭い森じゃ、一気に広がるのは火を見るより明らかだ。
……火だけに。

「魔法使うにしても火属性意外でよろしく。」
「いや、俺は火意外は使えないぞ……」

「……とにかく、火属性の魔法は禁止されてるから絶対に使わないこと。」

Re: 半死半生の冒険記 ( No.20 )
日時: 2020/03/31 20:42
名前: ・ス・ス・スR・スm (ID: X1kgwzZ6)


第13話「緑鼠と炎の剣」



アロマラットは緑色のネズミだ。殺傷能力が低く、個々で行動をすることが多いためそこまで脅威度が高いわけじゃない。むしろ低い
だが、厄介な部分もある。一つはすばしっこいくて、体も小さいので捕らえにくい。

もう一つは

「だぁー!全ッ然見つかんないぞ!!」

前かがみの姿勢が続くため、結構キツい。
さっきからずっと草を掻き分けていたバーンが、苛々した声色で愚痴を吐く

「見つかりにくいんだよ!草の色と同じじゃねぇか!」

そう、もう一つの厄介な点は、
アロマラットは緑色で、草と同じ色なのだ。
こういった所に生息するアロマラットは草と保護色になるため、とにかく見つけにくい

「時間かかるだろうなぁ……」

助けてくろ丸。

『……アロマラットは木の実を主食としている。木の実がなる木を重点的に探すのだ。』




結果から言うと、くろ丸の言う通り木の実がなる木にたくさんいた。
ただ、見つけた後の僕たちの行動が馬鹿だったのだ。

広い草むらの中、必死になって走り回る


「そっちに2匹行った!」

「分かった!……ってどこだ!?」


『……お主ら、もしかしなくても馬鹿だろ』

バーンと一緒に草むらを駆けっこしてる僕の頭の中に、くろ丸の呆れたような声が響く

こいつ(バーン)が悪いのだ。発見した後に突っ走るとか、アロマラットが警戒するに決まってるだろ!

『その後アランが躓きそうになって蹴飛ばした石が見事に巣穴に入ったのを僕ちんは見逃さなかった』

しゃあないじゃん!走らないとあいつ巣穴に突撃してたんだよ!?

運悪く蹴飛ばしてしまった石が見事に巣穴に入り、攻撃されたと思った中にいたアロマラットの親子が一斉に飛び出してきたのだ。
草むらに逃げ込まれ、音は近くからするのに、四方八方から音がするのでどこに居るのか分からないのだ。

腰にかけていた短剣を引き抜き、どこから飛び掛ってこられても対応できるように構える。
流石に状況が悪いと思ったのか、くろ丸が冷静な声で指示を出す

『右斜め前の木の下に一匹、バーンの半歩後ろに一匹、真下に一匹』

何で分かったのか知らないけど了解!……って真下!?

「うわぁっ!?」

反射的に下から飛び出してきたネズミの突進を倒れるように避ける。
勢いを保ったままネズミは再び草むらへと潜ろうとする

「逃がすかっ!」

倒れる間際にネズミに向かって短剣を伸ばす。手応えはあった!
後ろ足に重傷を負ったネズミは空中を回るように重力に従ってそのまま落ちる

再び短剣で刺す。今度は頭を狙ったので絶対死んだ

「一匹やった!」
「よくやった!」

一匹を仕留めた後、他のネズミは急に動きが早くなった。

「くそっ!……この!」

バーンはけん制するようにやたらめったら魔法剣を両手で振り回している。

カシュッ

「痛っ!」

アロマラットが流れるように爪で引っ掻き、バーンの足に切り傷ができる

カシュッ
「このっ!」

アロマラットは止まらず、もう一度しかけてくる
カシュッ
「痛いって……」

「言ってんだろうが!!」
もう一度しかけようと、草むらから飛び出してきたアロマラットの眼前には、

『──ほう』

轟々と燃える炎の剣があった

頭を切り込まれ、燃やされ、アロマラットは断末魔を上げて地面に落ちた
さっきのアロマラットより小さかったので、恐らく子供だろう。

残った一匹のアロマラットは激怒したように鳴き声を上げながら爪で切りかかる

バーンはそれを知っていたかのようにアロマラットが飛び出してきたタイミングに合わせ、再び炎の魔法剣を振りかざした


「ッてぇー……。だいぶ貰っちまったぜ……」

ゆっくりとバーンに近づき、とりあえず頭にチョップした
「うーん、3歩歩いたら忘れてしまう頭でもしてるのかな。火属性魔法はあれだけ使うなって言ったじゃん。Lv1の僕らが罰則食らったら冒険者ライセンス剥奪もはりあえるんだぞ?分かってる?」
「……火魔法じゃなくて火の武器強化だ」
「エンチャントでも、結果的に燃えてしまったら同じだよ!」

「……燃えてない」
「僕が水魔法を放ったからね。バーンは自分で火魔法意外使えないって言ってたよね。」


チョップされた頭を抑えながら、イタズラがバレた子供のようにバーンはそっぽを向いた

正直、かなり焦った。ネズミを切ったバーンが決めポーズ取ってる間に、火はアロマラット二匹の死体からかなりのペースで広がっていたのだ。
後数十秒もしたら他の芝や木に燃え移っていただろう。
咄嗟に水魔法を放ったおかげで難を逃れたが、もっと火が広がっていたら水魔法の適正がない僕では鎮火は……
………魔力を多めに使ってたくさん行使したらできないこともないが、
山火事になっていた可能性は十分にあった。

ぶっちゃけもっと叱りたいところなんだが……


……しょうがないなぁ


「………はぁ。まぁ、お疲れ様。最後のはカッコよかったよ。」

このまま拗ねられたら困るので、適当に褒めておく。
あの短時間で2匹を討伐してくれたのは事実だもんな……。

バーンは一瞬呆けた顔をしたが、僕が言った言葉を理解すると、いつもの調子でドヤ顔してきた
「だろ!」

「とりあえず、討伐の証となる尻尾は自分で切っといて。他の素材は換金して自分で狩った分だけ貰うってことでいい?」
「いいぞ!」



アロマラットの処理を始めたバーンの、その背中にかかっている魔法剣を見つめる
珍しく、驚いたようなくろ丸の声が頭の中に響く。

『あのバーンってやつ、もしかしたらとんでもない大物に育つかもな。』
うわ、くろ丸が誰かを褒めてるのって新鮮だな……

『失礼な。僕ちんは凄いと思った人は素直に褒めるんだぞ』
へー、意外。たしかに、最後のタイミングの合わせは普通に凄かったもんね

『まぁ、僕ちんならもっと鮮やかにねじ伏せていたがな』
そのいちいち挟む自慢ってどうにかなんない?
『なんない』
さいですか……


「終わったぞ!」
焦げたアルマラットの死体と、尻尾を持ったバーンがこちらに声をかける

「んじゃあ、先に帰っといて。僕は後4匹狩るから。」
「……一匹の追加報酬銀貨5枚だぞ?日が暮れるまでしたいのか……?」(※日本円で500円です

個人個人でクエスト受注しているので、途中でどっちかが先に帰っても問題はないはずだ。

それに悪いけど、ウチには食っちゃね悪魔の分も食費がかかるんだ……。
だから最大報酬の大銀貨2枚と銀貨5枚までやるつもりだ。

「大丈夫。すぐ終わらなかったら諦めて帰るから。」
「?そうか。気をつけろよー」

幸い、まだお昼前なので十分間に合うだろう。
バーンと別れると、自分の頬を軽く叩いて気合を入れなおした

「後4匹頑張るか……」


『頑張るのだ!』

……いや勿論お前も手伝えよ?

Re: 半死半生の冒険記 ( No.21 )
日時: 2020/04/01 11:33
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

作者コメント「いちいち名前かかないといけないの面倒くさいな……」
13話の時の名前がバグってます。お前誰だよ。

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第14話「悪魔の力と魔力探知」


今日、アロマラットの討伐で試したいことがあった。


呼吸を整え、腕に集中し、魔力をかき集める
腕は黒く侵食し、鋼鉄の禍々しい腕となった。

『だいぶ慣れたようだな。』

……まーね。まだよく分からないけど。
これって、契約の証だっけ。

『そうだ。この偉大なる僕ちんの強力な魔力を契約したお前に与えているのだ。』

くろ丸より強いやつ意外の攻撃は受けないって言ってたな……
それにこれ、地味にかっこいいんだよね。闇のオーラって感じがして。

「アロマラットなら通用するよね。この腕」
『何を言っておる。あんな虫ケラはおろか、もっと力を入れればドラゴンの鱗だって貫通できるわい。リーチだって魔力を込めれば伸ばすこともできる』

ど、ドラゴン……。もう規模が凄いな……。
というか、そんな機能もあったのか。

『まぁじっくり試すがよい。………左前の木の根元に1匹。その後ろの木の上に一匹だ。』

いや、お前もやるんだよ。

伝えたから後はヨロシク、みたいな声でアロマラットの位置を伝えてきたくろ丸にツッコみを入れる
早く帰りたいし、あと少しでお昼になるなってしまう。お腹が空いた状態でクエストをするのは嫌だ。





「うわ、本当に伸びた」

くろ丸の言うとおり、魔力を込めて指が伸びるイメージをしたら、触手のように真っ直ぐと先端に向かって細く伸びた
しかもアロマラットを貫通した。

でもこれ、ちょっと、なんていうか………。……これは封印しておこう。


討伐したアロマラットの尻尾を指で切り、硬化していない方の手で掴む。
隣には、すでにアロマラット3匹の死体の上でかっこつけながら四足歩行のくせに仁王立ちしている黒羊姿のくろ丸がいた。

「は、はや」

「こんなもの、僕ちんにかかればちょちょいのちょいだ!」
「そっか」


ふと、気になっていたことを口に出す

「毎回どうやってアロマラットを見つけてんの?」

アロマラットは草に隠れていて、しかも同じ色のため、短時間で3匹も見つけて倒すのは相当難しいはずだ

「ん?別にただの魔力探知だぞ。」
「……ローナさんも言ってたけど、それどうやんの?」

さっきまでローナさんの存在を忘れていたな……、街に買い物に来てたんだっけ。
一度も見なかったけどもう帰ったのだろうか。
忘れていたことに内心かなり罪悪感を感じながらも、くろ丸の方に向き直る

「それも知らないのか……。今の時代の冒険者は一体どうなっておるのだ……。はぁ、まぁいい。今から簡単に言うからよく聞いておけ。」

逆に昔の冒険者って皆魔力探知使えてたの……?確かに、一昔前が冒険者の黄金期って呼ばれているらしいけど。

「………」

次の言葉を待っていると、
急にくろ丸が思いついたように黙った

「ん?どうしたの?」


羊姿のくろ丸は、かなりわざとらしくお腹を抱えながらペタりと倒れこんだ


「お腹空いたなぁ……」

………なるほど。情報には対価が必要ということか。
急にふてぶてしく見えてきたくろ丸に、全力で嫌そうな顔を作りながら言った。

「……後でオークの串焼き2本」
「6本寄越すのだ。」
「無理、3本」
「5本」
「よ、4本」

あれ以外と高いんだぞ!

「……うむ!ではまず最初に、体のどこからでもいいから魔力を波のように放出するのだ!あまり魔力を込めすぎてはいかんぞ!」

大きなため息を吐いてから、くろ丸を殴りたい衝動を抑えて言われた通りにする。
はいはい、体外放出ね。それくらいならでき──

「あれ……」
以外と難しい?

魔力の調節は幼い頃から初級魔法の訓練で身に付けているので体外に魔力を飛ばすことはできているのだが、
何かに当たった感覚しか感じなく、波のように出すことができない。

くろ丸は構うことなく話を続ける
「では、次にその魔力の波を薄くする。それで物体にぶつかる感覚、反動によって起こる感覚ある程度分かるはずだ!後は、それが何に当たったのかを理解するだけ。要するに慣れだな!」

「…………」

で、できない。
さっきからずっと魔力を調整しているが、波ができない。
何かにぶつかった感じや、サイズはある程度分かるのだが、それが何なのか全くわからない。

ずっと黙り込んでいる僕を不審に思ったくろ丸が、体勢を変えて声をかけてくる
「どうした?…………もしかしてできてない?」

何かを察したくろ丸の顔がにやけている。その顔にチョップを食らわして、晴れやかな笑顔で告げる

「よし、アロマラットは5匹やったし、帰ろう。」