ダーク・ファンタジー小説

Re: 半死半生の冒険記 ( No.2 )
日時: 2020/03/24 18:59
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)




──死んだほうがマシだ


そう嘆いた自分がいた



──絶対に生きてやる


そう叫んだ自分がいた





自分を笑うことしかできなかった


どうしても救えない自分がいた





けど、生きたいと思ってしまった






だから、抗った

Re: 半死半生の冒険記 ( No.3 )
日時: 2020/03/25 08:18
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

一言コメント「いちいち名前入れんのメンドクサイ……」

    ──────────────

『魔血病』
原因は不明。
体にある魔力が体外に漏れ、
生命活動に必要な魔力量が足りなくなる病気
数多の科学者が魔力が体外に漏れる原因、またはどこから漏れるのか
それはどうやったら治るのかと研究をしてきたが、何一つとして分かっていない
必ず死ぬ病気の代表例だ。




僕は15歳の時にソレにかかった。


運命という言葉が本当にあるとするのなら、
僕は誰よりも神を憎める自信がある



薄暗い部屋の中、ノック音が響く。静かにドアを開けて入ってきたのはメイド服を着たこの屋敷の使用人

「アラン様、お食事の用意ができました」

あくまで仕事。淡々とそう告げる使用人には、愛想なんてものはなかった

「……あぁ、花瓶の横に置いといてくれ。後、換気のために窓をあけといてくれ」

当然だ。むしろこんな状態の僕を見て、愛想笑いの一つでもできたら上出来だ。
機械のように言われた通り動くと、使用人は一礼してこの部屋を去っていった


痩せこけた頬、食べ盛りの少年にしては細すぎる腕
少し力を入れられたら簡単に折れてしまうだろう。

「………」


ヨロヨロと手を動かし、ベットのすぐそばの花瓶棚に置いてある食事を取る
パン・スープ・薄く分けられたリンゴ・水
貴族の食事にしては、あまりに質素な食事だった


食事中、上手く手に力が入らず、何度もスプーンを落としかけた


何もすることがなく、ボーっとしていると、
カーテンで閉められた窓の外から、賑やかな声が聞こえてくる

「……そういえば、今日はお茶会を開くってティナが言ってたな」

ティナ、というのは次女クリスティーナのことだ。
昔はよく遊んでいて、今でもたまに見舞いに来てくれる

Re: 半死半生の冒険記 ( No.4 )
日時: 2020/03/25 21:00
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

3時に開始のお茶会に向けて、たくさんの使用人がティーセットやお菓子を用意している
子爵のお茶会とは言え、同じ子爵、もしくは男爵の貴族が揃う。
貴族としての立ち振る舞いや、ドレスの豪華さなんかを見せ付けて、どれだけ金に余裕があるかを見せ付ける
ぶっちゃけ、僕が昔行ったお茶会はほとんどがそうだった。まぁ親しい貴族とのお茶会はもっとやんわりとしたものなのだろう

「……今の僕には関係ないけどね」

この状態では、出口にたどり着くことさえ厳しいだろう


昔はよく、稽古をしてくれた父上も、疲れた時に甘い物を用意してくれた母上も、時々見舞いに来てくれるものの、
兄にいたっては、元々あまり仲が良くなかったから、僕が魔血病にかかったと知った途端、腫れ物を触るかのような態度をしてきた

一度たりとも目を合わせてくれない


「…………」

しょうがないんだ。分かってるんだ。
これがどれほど理不尽な病気なのか、皆もう分かっている

3週間に一回、医師や白魔道士を呼んで見てもらっているが、全員が首を横に振って帰る
その金だって、何回も呼ぶだけで結構な額になるので、
2ヶ月に一回になった


分かってる、自分でも分かってる


「……分かっていても、辛いよ」

日に日に自分の力が弱まっていく感覚
暖かい熱が冷たくなっていく感覚
皆が諦めていると知って、一人突き放されたような感覚


「何で僕が」、なんて何回も思った。今でも思っている
どこからか湧いてくる悔しさに、拳を握る




腕を振り上げ、枕に向かって叩きつける

「クソッ!何でだよッ!!」


何度も


「──僕が何かしたのかよッ!!」




どれだけ力を込めて殴っても、羽毛一枚も飛び散らない

「……はぁ、はぁ」

僕は、このまま死ぬのだろうか
……いや、死ぬだろうな

1年たってこんだけ衰弱していれば、あと2ヶ月も持たないだろうな。


何かやれただろうか

何か残せただろうか


僕という命は、どれだけ軽い物なのだろうか



ベットの上で過ごした1年間、どれほど無駄な努力を重ねただろうか
薄暗い部屋の中で、風で飛ばされそうな命に必死にしがみつく僕は、どれほど見っともないのだろうか



このまま、僕というたった1人の人間が、世界から消える








ふざけんな



「………そんなこと」



そんなこと、認めてたまるか




「絶対に」





────生きてやる