ダーク・ファンタジー小説

Re: 半死半生の冒険記 ( No.5 )
日時: 2020/03/25 13:16
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

一言コメント「実は、さっきまでずっとプロローグやったんやで。」
第〜話「」って感じで書くので、目次のも見やすくなると思います

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第一話「計画」



夜の食事を終えて、再びベットにもぐり、
生きるための手段を考える



まず、このままでは駄目だ

死んでしまう

先週に医師たちが来たから次に来るのは2ヵ月後
それまでずっとベットで寝込んでいては待っているのは死のみ、そもそも2ヶ月耐えても助かるなんて微塵も思わない

最初は親も心配してくれたが、10ヶ月を過ぎた頃には僕が助かるという可能性を諦めて、形だけ僕を救う努力をしている
昼の食事のように、あまり僕にお金をかけない方法を探している
兄が提案した「あまり塩辛いものを与えない」「医師を呼ぶのは2ヶ月に一回」という提案も心苦しいフリをしながら承諾していた

そんな家に僕の未来はない

だから、この部屋から脱出する

出た所で、何も準備しなければそのまま野垂れ死ぬ
では、何か方法でもあるのかと言うと……


「……心辺りは、ある」


一歩間違えれば死ぬ、そんな方法だが。




最近、ずっと僕の体から漏れる魔力を観察していた白魔道士が、ある事を呟いたのだ
「……まるで、溢れてるみたいだな………。」

本人にとっては思ったことを口に出してしまっただけだろうが、その呟きは、
僕にとっては衝撃的なことだった。

体のどこかの小さい穴から少しずつ漏れて、段々と魔力量が少なくなり、やがて衰弱しきって死ぬ病気だ。
出てるだけなら、「溢れる」何て表現は相応しくない

だから、それから使用人に頼んで探した。



過去に魔血病になった者たちの、魔力量を。



使用人に頼んで調べてみると、魔術師、貴族が大半だった。
魔術師はもともと魔法への適正があって、魔力量が多い者がなる職業だ。
貴族は恵まれた血統から、生まれながらに何かの才能や、常人より魔力が多い者が比較的に多い。
と、感染した者はどれも魔力量が多くてもおかしくはない
一部、平民や詳細のよく分からない人も居たが、今の仮説で行けば、この人たちも魔力が多かったはず

「……まぁ、ただの仮説でしかないんだけど」


「なぜ魔血病になったのか」という、多くの科学者が挑んだ謎の答えは


「魔力量が多く、蓄積した魔力が本来なら流れるはずの魔力の道筋から溢れた」

魔力は体のどこでも流れており、魔力量の多い者の魔力の道筋はパンパンで
それが何かの拍子で破裂して溢れた、というのが僕の考えた仮説だ。

何故か誰もいないのにカッコつけた顔で言ってしまったが、あくまで仮説。
じゃあどっから漏れてんだよって話だが、知らないよ。それ探すの魔術師さんのお仕事でしょ。


長ったらしく言ったが、つまりは何が言いたいのかと言うと


「僕は魔力量が多い」


これで間違ってたらただのナルシスト。自分でも思った


結局、助かる方法というのは


「魔法を打ちまくって魔力量を最大限に減らす」

本末転倒と思われるかも知れないが、勿論考えて物を言っている


分かりやすく言えば、水が満タンに入った皮袋を手で持っているとして、
その皮袋の丁度真ん中に穴が開いたとする
当然水が漏れて、穴のの下ぐらいまで水は減るが、他に穴がないのだから、その穴より下は減ることはない。ということだ

それだったら、魔血病も魔力がある程度漏れたらそれ以上悪化しないんじゃないか。と思うのだが、
そんな簡単な話だったら「必ず死ぬ病気」なんて呼ばれてない。


白魔術師いわく、魔血病で漏れる魔力は、体外に出て行った魔力の穴を埋めようと魔力が集まり、また出て行く。
そんな蟻地獄みたいな連鎖が起こっているのだ。

だから、その集まる魔力さえ使い果たして、出て行かないようにする
単純だが、危険極まりない荒治療だ。

人間は、自力で魔力を作ることはできない。マナポーションだって、体にある魔力の働きを促進させて増やしているだけ。
だから誤って基盤となる魔力を使い果たすと、───死ぬ。


「………でも、これ以外に選択肢はないし」


この治療で死んだとしても、きっと遅いか速いかの違いだ。


残る問題は魔法をどこで撃つか、と、治ったらその後はどうするか、だ
魔法は貴族の者なら全員初級魔法を覚えるのが常識なので、一通り覚えている。
適正のあった属性の魔法は、中級まで。僕は炎に適正があったので炎の中級魔法はいくつか覚えている


「……これは、もう兄さんの庭でやればいいや。」

僕の数少ない楽しみだった食事を質素にした仕返しだ。
安心してください、炎は使いません。ちょっと水やりをするだけです。


この病気が治ったら、装飾品でも売って、どこか遠い町にでも行って気ままに生きよう。
……長い間ベットに縛られてたんだ。それくらい許されるだろう

実行は来週の伯爵様が開催するパーティの日。
当然僕は行かない、というか、行けない。
家に居る使用人も何人か連れて行くので、都合が良い
警備は門に2人と、屋敷の入り口に2人。
子爵の家はそんなものだ。まず、貧しい貴族には使用人も数えるぐらいしか雇えない。
屋敷の裏にある兄さんの庭は、警備の位置から遠いので、多少大きな音を出してもバレないはずだ

だが、見つかったら即アウト


自分に勇気づけるように、手を握る



「死んでたまるか」

Re: 半死半生の冒険記 ( No.6 )
日時: 2020/03/25 22:21
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

作者コメント「え、閲覧数増えてなくない………?( ;゜Д゜)」
いや、更新はしますけども。

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第2話「決行」



決行の日、
今日、僕が自分で自分の人生を変える日
絶対に成功させなくてはならない。そんな緊張のおかげで朝から意識がはっきりしていた

夜までは普段通りに過ごし、夜ご飯を食べた後に着替える
いつも通りに過ごせばいい

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「アラン様、食事の用意ができました」

何も警戒していない……、というより、無関心な使用人から夜の食事を受け取る
素早く済ませ、押入れから誇りかぶっていたある服に着替える


急所は硬い皮で守られ、それでいて機動性もある動きやすい稽古用の服だ


「……全然入ったな」

1年前の服だったので、着れるかどうか不安だった。
むしろゲッソリと痩せた分ダボダボだったが、そこまで機動性に影響はしないだろう。
ベルトである程度調節もできるので問題はない

旅に必要なお金として大銀貨5枚を腰にかけてある袋に入れ、護身用の短剣も、鞘を腰に引っ掛ける

おぉ、ちょっと冒険者っぽくなったのではないだろうか。
………こういうの、本当に久しぶりだな……。


「……って、そんな場合じゃないな」


窓の向こうから、両親やティナ達を乗せた馬車が門を通り過ぎるのが見える


屋敷には、警備と、数人の使用人しかいない。


数分たった後、僕は部屋から出た。
数歩歩いた時点で、すでに足はふらついている。


「……動けっ」


一歩一歩が小さく、数メートルが異様に長く感じる

壁にしがみつきながら歩き、手すりを使って階段を降りるが、
途中まで下りた所で耐え切れずに倒れ、転がるように階段を下りた

「がぁっ!!」



……裏庭まであと少しなんだ!!耐えてくれ!!!

「く、そ、ぉぉぉ」


全力で手に力を込め、何とか体を起こす。先ほどよりもっと不安定に揺れながら歩き、扉のドアノブを回す
唱える水魔法の感覚を必死に思い出す。魔法を使うのも1年ぶりなので、ちゃんと発動するか不安だが、
水の初級魔法、『水撃ウォーターショック』は比較的簡単な部類なので、恐らくいけるはずだ。

裏庭の中央まで歩き、誰も居ないのを確認し、腕を前にかざす。
腕に意識を集中させ、体の中から掻き集めるように魔力を搾り出す。


「水撃!!」

手に大きな水の球体ができるが、あまり速いとは言えない速度で飛んでいく


体から力が抜けていく感覚は消えない


「水撃!」

まだだ。
今度は水の量を増やして発動させる

「水撃!」

足がふらつく、が、まだあの感覚が消えない

「水撃!水撃!」

眩暈がする



「すいげ──「誰だ!そこで何をしている!」

!!?

不味い!警備に見つかった!
雲で覆われた夜空のおかげで、向こうもこちらもよく見えていない
裏口の扉の、反対の壁に向かってに向かって走る


が、


「ぐっ」

突然襲ってきた脱力感に足が限界になり、塗れた地面に倒れる


──追いつかれる。



こんな……、こんなことで終わってたまるかっ!!


「風撃!」


手に風を発生させ、無理やり体を起こす。
その勢いに任せ、全力で走る


壁まで走って再び風撃を放つ、地面に向けて強く。

「風撃!!!」


風の適正はないので、初級魔法を無理やり強くして撃っただけだ。


壁を飛び越え、着地をする際に再び風撃を放つ───が、風撃は出なかった
「!!?がぁっ!!」

発動するのに必要な魔力量がなかったのだ。


勢いを殺さないまま地面にぶつかる。先に出した右足は、地面に触れた時、変な音を立てて曲がった


「あああああぁぁぁ!!」

Re: 半死半生の冒険記 ( No.7 )
日時: 2020/03/26 08:09
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

作者コメント「閲覧数1増えた………ッ!」
次から1コメントで1話にします。
文字数はだいたい3000〜4000ぐらいになるかと。

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経験したことのない激痛に思わず叫ぶ
苦痛で顔を歪め、折れた足を押さえる。

「……さっきまでポンポン出てたくせにっ」

適正じゃない風の魔法を強く撃ったせいで、通常より多く魔力を消費したのだ
急いで応急措置として手ごろなサイズの木の枝を靴に差込み、ズボンのすそを破ってその布で固定する。
不味い……、もたもたしていると出口から回ってくる警備兵に追いつかれる……

激痛を意識しないように手に力を込めて立ち上がる。足を引きずりながらとにかく歩く
裏庭の壁の向こうは森だった。夜には月光ぐらいしか明かりがなく、薄暗い。

「歩か、ないと………」

森を越えたら、草原があるはずだ。その草原を下ると、町が、あるはず……

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………どれだけ歩いただろうか。1時間、いや、少なくとも40分は歩いたはずだ

「おか、しいな……」

事前に調べた地図では、そこまで深い森ではなかったはずだ。
なのに、一向にこの森から出られる気がしない。

それに、さっきから視線を感じる。どこにもそんな気配は感じないが、不気味だ。
この道も、人が通れるくらいには間が空いていて、通れないこともないが、整備されたにしては雑すぎる……。


衰弱した体力はもう限界を超えている。足が時々痙攣して、倒れそうになる
「……くそっ」


朦朧とした意識の中、飛び出していた気の根っこに気づかず、足を引っ掛ける。
「ぐっ……」


急いで腕で体を起こそうとするが、もう体のどこからも力が出ない。
「………」

何度も腕に力を入れるが、今度はどう頑張っても力が出てくる気がしない。
うつ伏せの状態のまま、意識が飛びそうになる

「…………いたぞっ……!………捕らえろ……!」



かなり遠くから、警備兵の声が静かな森に響く





あぁ、ここで終わりなのか。
あんだけ入念に準備したのに、案外あっけないな。


………死にたくないな。でも死ぬんだろうな。


土を握り締めるが、起き上がれない。
このまま捕まって、死ぬまでベットにくくりつけられるのだろうか

怖さからか、悔しさからかなのか、目をから次々と涙が零れる




どんだけ足掻いたって、結局死ぬのに変わりはないじゃないか。
どんなに有名な医師を呼んでも、それは「死ぬ」という事実を強くするだけだったじゃないか
過去に魔血病にかかった人も、同じ気持ちで死んでいったのだろうか。

いや、医師や白魔道士を呼べない人たちは、「まだ助かる方法があるはず」という希望にすがることができる
それさえ知った者達にとって、ソレは、残酷なものでしかない。








「…………」


寝転がりって仰向けになる
何もかも諦めて、綺麗な満月をじっと見つめた




警備兵の足音が聞こえてくる。
後、数十秒もないうちに捕まるだろう



何度も湧いてくる悔しさに唇をかみ締めたとき




「─────やれやれ」




視界が、暗転した。