ダーク・ファンタジー小説
- Re: 霊障対策課24時! ( No.11 )
- 日時: 2020/04/20 19:12
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
招待客として潜入
・柳水流愛瑠(偽名:伊黒愛良)
青色の正装を着用して潜入。周りの潜入職員たちに目を配りながら警備をします。
・雛芥子累槻(偽名:咲丘累都)
正装を着て潜入。偽名は愛瑠が考えた。
・鹿平グエン
偽名は使わない。櫻井椿とは前に衣装デザイナーとしての仲があり正式に招待されている。
給仕として潜入
・灰崎憶人
・月足慧
警備員として潜入
・圓勺時哉
・古井戸信哉
古守恭一、目黒ヒヨは今回の事件では調査パートのみ。
- Re: 霊障対策課24時! ( No.12 )
- 日時: 2020/04/20 19:43
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
結婚式当日。
愛良(愛瑠)の肩を軽く叩く女性がいた。それは友人、霧矢ユキだった。愛瑠と呼ぼうとした
ユキの口を塞ぎ小声で言う。
「今は仕事中なの。愛良って名乗ってるから…ごめん!」
「うちこそゴメン。愛良、お仕事頑張れ!」
愛良は頷いた。新郎新婦の誓いも終わりアフターパーティが始まった。現在午後六時。
後3時間ほどで終わるが無事に終わる気配は無い。累都(累槻)はチラッと愛良のほうを見て
また目を逸らした。グエンもまた辺りを横目に見ていた。
給仕側もまた同じ。
「流石は大女優、いろんな人がいるね」
憶人は隣に立つ慧に声かけた。
「そうですね。少しキッカケを与えれば混乱させるのは簡単…か」
グラスにシャンパンを注いでいく。華やかなパーティはそのうち地獄へ変わる。
同時刻、警備側。
騒がしい声が外まで聞こえていた。
「今のところは問題なさそうだな」
「そうですね。一応、恭一さんから貰った火気厳禁テープ、立ち入り禁止テープを避難経路に
貼ってあるので大丈夫だと思います」
時哉の言葉に信慈は返した。張り詰めた空気を突き破るように鋭い悲鳴が聞こえた。
- Re: 霊障対策課24時! ( No.13 )
- 日時: 2020/04/20 19:57
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
「ひ、人が…人が人を、喰ってる!!」
慌てた口調で半べそをかきながら一人の男が叫んだ。新郎新婦は?愛良は辺りに目を向けるも
姿が無い。しまった!同時に一般警官が撃たれた。窓ガラスを突き破り複数の集団が
入ってきた。
「よぉ、犬ども!あのメガネは元気かな!?調べはついてたんだろ、こうなることも予測済み!
そうだろ?じゃあ問題ねェ…オカルト警官共、ここで死んじまえよ!!!今日は良い日だぜ!!!」
あの男が南井。確かに骨の蛇のようなものが彼を守るようにとぐろを巻いている。
「お前らは私から家族を奪った…だからお前らからも奪ってやる!何も救えず苦痛に
埋もれて死ね!!!」
そして幼げな少女が北見、能力なのか鬼のような角が生えている。ユキは愛良の腕をギュッと
握る。あっという間に地獄が出来た。テロリストの誰かが使役しているであろう火蜥蜴の
火が引火し始める。人を襲い始めた人だった客たち。銃を乱射する南井や北見、そして
他のテロリストたち。愛良は近くのマイク越しに叫んだ。
「皆さん!今、落ち着けと言っても落ち着けないのは分かっております!場内の避難経路を
使って外へ避難をしてください!今、その近くでは多くの警備員が控えています!彼らの指示に
従って非難してください!!!」
「愛良ちゃん…!」
ユキは心配そうに愛良を見つめる。
「わ、私も何か手伝いたいよ!何か手伝わせて!」
『貴方たち、聞こえるかしら!?全員の衣服に耐熱、耐火を付与したわ!大量の水を被らないように!』
グエンの声だ。
『オイ、全員聴こえるか!?小さい蜥蜴みたいなのコップの水で消滅する!既に客がひっくり
返した水で結構な量、潰せてるぞ!』
累都の声だ。
「ユキちゃん危ないから避難して。もし近くに水があって蜥蜴みたいなのを見つけらそれに
水をかけて。火を広げてるのはその蜥蜴だから」
「ッ!うん!!」
- Re: 霊障対策課24時! ( No.14 )
- 日時: 2020/04/20 20:33
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
一般の警備員たちも避難誘導に専念する。退路を塞ごうとするテロリストたちを牽制しながら。
憶人は首謀者のリーダー南井に目を向ける。幾人か銃で彼を遠距離攻撃していたが銃で
撃たれた傷は無さそうだ。
「(となると…)」
憶人の連絡は瞬く間に広がる。
「あ、いたいた。柳水流さん、生き残ってますかぁ?」
偽名で呼び合う必要は無いし全員が互いを本名で呼び連携を取る。声を掛けてきたのは
鶴宮夏彦だ。給仕として潜入していた。特殊な紙に霊力による火を付与し、それを操る。
折り鶴にすれば伝書鳩にすることができたり、紙吹雪で目くらましなどが出来る。
「うん、無事だよ。私の方はどうにかするから夏彦君は自分の方を頑張れ!」
「そうは言ってられないでしょう。こっちも別の人に言われてるんですよ。聞いてなかったでしょ?
ある程度避難は完了してる。課長でしょう?グループを崩すならリーダーを潰すのが一番
早い」
そういうことか。元霊障対策課職員がいるなら愛瑠の情報が流れていても可笑しくない。
霊能力を持たないとなれば簡単に倒せるし人質にも出来ると考えるのは自然だ。
- Re: 霊障対策課24時! ( No.15 )
- 日時: 2020/04/20 22:05
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
時哉と慧は合流し操られた人々を気絶させることに専念していた。
「何か可笑しくないか?力が弱まり出したっていうか…」
「あ、時哉さんも感じます?多分、ホール内にいる北見って子に何かあったんでしょう」
慧は答える。彼の言った通り、ホール内で戦う職員の数名は未成年の少女、北見と対峙していた。
『南井はこういった荒事に慣れているけど彼女は慣れていないはずさ。よく見てごらん、
屍鬼の力を纏っているけど取り巻きが戦っているだろう?恐らく殺しには慣れていないんだ』
憶人の落ち着いた声が応戦する職員の耳に入ってくる。愛瑠は辺りを見て口を開いた。
『累槻君、南井は多分霊能力を持ってません。銃を封じれば彼自身の戦闘力は下がると
思います。憶人さん、確か解呪用の札を何枚か持っていましたよね?それを蛇みたいな姿を
した南井の妻、伊織に貼り付けてください。敵意を出さないように』
「了解、やれるだけやってやる」
累槻は答える。憶人も「分かった」と一言返した。多くの挑発に乗ってしまった北見は自身の
体をナイフで傷つけた。滴り落ちる血は霧のようになって見えなくなった。
「良いんですよ…私は化け物らしく死ぬ!こちら側で良い!!!」
「可笑しいよ、それは。学校、サボってるでしょ?だって考えれば分かるもの!奪われたから
奪うって言う考えやその行動は全部私たちと同じだし」
微かに北見が揺らいだ。
「だってそうでしょ!?こっちだって大切な家族を奪われたから怖い奴らから奪ってんの!!
そっちばっかり被害者面しないで!!知ったかぶりの癖に!!!何も知らない癖に!!!誇大妄想
してんじゃねえよ、この野郎!!!!」
愛瑠が叫んだ。その気迫に北見が気圧され始めた。愛瑠は横目に夏彦を見た。
「オイオイ、本気ですか?柳水流さん」
懐に隠していた立ち入り禁止と使用禁止の虎テープが握られていた。
愛瑠は地面を蹴り、一直線に走り抜ける。
「は、ハハハッ!頭が可笑しくなったの!?どうぞ襲ってくださいって言ってるようなものでしょ!」
北見は能力で従えた人造屍鬼たちに目を向ける。彼らは透明な壁に阻まれたように何かを
叩いたりしている。よく見ると下には立ち入り禁止のテープが貼られていた。
「いつの間に!?」
「気付きませんでした?無理もないか。…そうだ、こういうの知っとくと便利ですよ?
普段優しい人ほど怒ると怖いってね」
夏彦は不敵な笑みを浮かべた。
- Re: 霊障対策課24時! ( No.16 )
- 日時: 2020/04/20 22:20
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
彼女は動揺して頭が混乱、どうすればいいか分からず大振りな攻撃を仕掛ける。両腕を高く
上げたのだ。戦闘力皆無の愛瑠でも拘束が簡単。腰回りに二種類のテープが巻かれた。ぐるぐると
走り回る、回った回数が多くなる。北見の体はテープでぎちぎちに拘束される。
使用禁止テープ、巻かれた相手は霊能力の力が弱まる。完全に消すことは出来ないが今は
弱められるだけでも有難い。愛瑠はマイクを握り叫んだ。
「みんな、負けんな!!怪物になった自分がめっちゃ恥ずかしいぞ!!!喰いたいよりも穴が
あったら入りたいでしょ!!?そんな姿でウロウロしてたら社会的にピンチだよ!!!」
辺りから声が聞こえた。
「ひ、何だよ!お前、その顔!!」「貴方だって!汚いわね!!」「うえっ、汚ネェ!!涎まみれじゃん」
「アンタだってそうじゃない!!こんな人と出歩くなんて!!」
北見の命令<<<<<<<<<自分の恥ずかしい今の姿
恥ずかしさなどの方が彼女の呪いよりも強くなっている。
夏彦と愛瑠はハイタッチを躱す。愛瑠の耳に時哉の声が聞こえた。
「うわっ、なんか声がさ…何かあった?こっちは北見って子を抑えたけど」
『俺が噛まれたんです。あーいや、心配するほどじゃないんですけど手が空いてたら頼みます
地下駐車場に!新郎を装っていた櫻井椿のボディガード榊原徹次の様子が…!』
途中で連絡が途切れた。
「柳水流さん、あっちは大丈夫でしょう。俺たちは地下に」
「そうだね。急ごう」
二人は駆け足で地下駐車場へ向かう。
※北見サナ確保により人造屍鬼はほとんど機能停止、彼女も能力を使えません。
新郎→ボディガード榊原徹次
- Re: 霊障対策課24時! ( No.17 )
- 日時: 2020/04/20 22:37
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
南井の銃から出てくる蜘蛛。それは雛芥子累槻が使役する蜘蛛。
「残念、銃はもう封印されちまったなぁ」
「クソッ!!…ッ?」
何かが崩れる音、同時に蛇が地面に落ちて中から小さな女の子と小柄な女性が現れた。
その二人は紛れもない南井の妻と娘。伊織と佳織だ。彼の願いは二人を開放すること。
化け物の依り代にさせられた二人を開放すること。それを達成した今、彼は戦う意味を
無くした。彼の手首に手錠が掛けられた。
一方、地下駐車場では榊原徹次と櫻井椿の周りにドーム状の結界が貼られている。基礎体力が
少ない愛瑠は息切れをしている。
「大丈夫ですか?愛瑠さん」
「大丈夫だよ。最後まで頑張らなきゃ」
そう呟いた直後だった。起き上がった椿は近くにいた鐡治に噛み付いた。情の籠った目で
鐡次は椿を見ると彼女をそっと撫でた。
「あー…よかった。えりな…」
屍鬼。それが櫻井椿の正体。彼女はその場から離れない。動かない。職員に敵意も向けない。
- Re: 霊障対策課24時! ( No.18 )
- 日時: 2020/04/21 10:15
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
屍鬼として目覚めた櫻井椿は脱力し彼女の腕から榊原徹次が転がる。瀕死状態の彼は救急搬送され
椿については気絶させてから霊障対策課へ移動させられる。榊原徹次も手当てがある程度完了次第、
重要参考人として移動させられることとなった。
一方、南井と北見は職員に拘束。南井は恐らく極刑に、北見は霊能力者専用の更生施設に
送られることが決まった。東雲白亜は牢屋内で自殺を遂げている。
約一週間後。
「おや?珍しいね愛瑠ちゃんが居眠りとは…」
憶人は机に伏せて寝息を立てている愛瑠を見た。
「あー課長は徹夜が多かったであります。暫くはゆっくりさせてあげたほうが良いと思います」
信慈は椅子に掛けられた上着をそっと彼女に被せる。
「そうだね…過労で倒れて貰っては困るし必要になったら起こそうか」
先日。更生施設に愛瑠は顔を出した。一人、黄昏ている北見サナに声を掛けた。力が無い。
彼女はずっと俯いていた。
「私の事なんてほっとけばいいのに…化け物に構う必要はないでしょう?」
「あるよ、私には。北見サナちゃん、フェンリルに所属してから学校も行ってないって聞いたから
…そのワーク、分からないところは教えてあげる。といっても毎日来るわけじゃないけどね。
霊障対策課の職員は皆、普通の人には見えないものが視える。それは私も同じ、化け物だなんて
言わないでね。今はゆっくりその力と向き合うこと、そしていつか殻を破るんだ」
愛瑠はそう言った。サナの眼から雫が零れた。
霊能力は人を苦しませることがある。自分にしか見えない、出来ないことは時に周りから
忌み嫌われる大きな原因になる。
数日後、藤原宋一郎も無事退院し事件は完ぺきに解決した。