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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 霊障対策課24時! ( No.3 )
- 日時: 2020/04/19 22:15
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
テレビで新聞でインターネットで大々的に取り上げられている喜ばしいニュースがある。
大女優、櫻井椿の結婚というニュースだ。
「柳水流さん、ちょっと良いかな?」
「ほわっ!」
びっくりした。声を掛けてきた優男は藤原宋一郎、主に占いをする術師だ。彼の占いは
100%当たる。彼は珍しく愛瑠に声を掛けてきた。その内容はニュースに対しての占い結果。
「どうも嫌な結果が出たんですよ。それに電話が来ました、刑事課から」
「え?珍しい。向こうから電話ってくるんだね。で、内容は?」
いつの間にか周りの職員も聞き耳を立てていた。櫻井椿の結婚式の警護を霊障対策課に
回すという内容。そして占い師、藤原宋一郎の占い結果。事態が悪化するという占い結果。
その事件は霊障事件、それも大きな事件になりそうだ。少し緊張しだした愛瑠のデスクにある
電話が鳴り驚いた。受話器を手に取ると刑事課からファックスで事件の詳細を送ると
言われた。
「うっわぁ…読みたくないわぁ」
生き胆を抜き取った死体がいくつも見つかっているという事件。愛瑠は遠目に紙を見ていた。
「結婚式は確か一週間後、今日は4月19日か。これから暫くは長くなりそうだね」
「まぁこの一週間に色々情報を集める必要があるな。ここの課長は君だから頑張って回せ」
「そうですね。頑張るしかないかぁ…」
愛瑠は困ったような笑顔を見せた。書類をペラペラと見ていく。
櫻井椿(30)
国内外で有名な女優。知名度がある上、ネット上では真偽不明の噂が色々飛び交っている。
過去に離婚歴あり。前の夫は事故死、子はいない。
- Re: 霊障対策課24時! ( No.4 )
- 日時: 2020/04/19 22:44
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
「あらぁ、愛瑠ちゃんじゃない。今回の事件は大変ねぇ」
そう声を掛けてきたのはオネェ口調の男、名前は鹿平グエン。名前で分かる通り中国人の
ハーフで霊能力はエンチャントと呼ばれ身に着けた者の能力を上げる衣類、装飾品等を
作り出せる。
「貴方、若いんだからしっかり食べてしっかり寝なさいよ?ここではね貴方を信頼している
職員が多いんだから」
「はい、有難うございます」
飛んできたのは書類の束。それを投げたのは引きこもりがちな白衣の男、古守恭一。
彼もまたグエンに似たエンチャント系の霊能力を持つが彼の場合はトラテープや標識を模した
シールのアイテムを作り出す。彼は愛瑠には特別に作ったアイテムを渡している。
「一通り櫻井椿について調べた。結構オカルトな噂が目立つな。それに誹謗中傷も…大きい存在は
良い目で見られると同時に影で何言われるか分からねえ。後アイテムの方は大丈夫か?
足りなくなったら言えよ補充してやる」
「ありがとうございます」
グエンと恭一が去ると入れ違いで別の集団がやってきた。
「なんか随分と大きな事件になりそうだな。俺はお前が無事でいられるか不安でしょうがねえよ」
そう言った細身の男は雛芥子累槻、蜘蛛を式神とする女系家族の末っ子として生まれた。
「そんなに心配はいらないと思うけどね僕は。ほら、強そうな人がいるわけだから」
「あれ?灰崎さん、それってもしかしなくても俺らですか?」
圓勺時哉の言葉にごまかすように笑った男は灰崎憶人、記憶消去を専門にしつつ「悪魔」と
呼ばれる黄色の炎を用いた結果術も扱う。
「俺らって…僕も入ってるんですか?」
時哉に問う男は月足慧、対象に掌で触れることで気を操作することが出来て特殊な手袋を
通して霊的存在にもその能力を使える。月足慧と圓勺時哉は相棒同士だ。
- Re: 霊障対策課24時! ( No.5 )
- 日時: 2020/04/20 12:02
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
調査一日目。死体調査を担当したグエンと古井戸信慈より調査報告が入ってきた。
古井戸信慈は動物の霊を引き寄せやすい体質。憑依させれば身体能力を強化できるようだ。
「死体には齧られた痕が多くありました。こう、歯形のような形で無造作で…」
「顔には傷は無いし気絶させたり眠らせたりして殺したと思うわ」
二人が順番に簡単に説明する。更に信慈が話し出す。
「それと実は刑事課などからの情報で現場での痕跡は無し、こちらでも霊的な痕跡が無いのです。
意図的に痕跡を消されているようでして…」
「じゃあ現場からヒントを得るのは難しいのかな…でも齧られた痕があるってことはあれだよね?
人食い、もし本当にそうだとしたら霊的類が関係していると考えられる」
悩んだように声を漏らした愛瑠に信慈は「面目ない」と謝る。
「いや気にしないで。まだ序盤だから分からないことだらけなのは仕方ないことだよ」
「あ、話は変わるんだけど良いかしら?結婚式の警備は全てこっちに任されているのよね?」
グエンは話を変えた。分からないことを何時までも悩んでいても仕方ない。その話に乗る。
「うん。かといって全員が警備につくのもあれだから結婚式場側に色々頼んであるよ。
とりあえず結婚式の日には三つのグループに分けようと思う」
「招待客として潜入するチームと給仕として動くチーム、そして式場の警備員として動く
チームね?」
グエンの言葉に愛瑠は頷いた。
「なら私にちょっと意見があるのだけれどいいかしら?霊能力を使うと体が変形したりする子とか
いるでしょう?そういうのが心配な子は私のところに来なさい。採寸してあげるわ!」
周りにいた全職員にグエンはそう伝えた。
- Re: 霊障対策課24時! ( No.6 )
- 日時: 2020/04/20 14:41
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
調査二日目。新たな報告が信慈によって行われた。先日の夜に殺されたと思われるその死体には
やはり噛まれた痕があった。それを照合すると複数の人間の歯形がある事が分かった。
更に今回の死体には霊的な跡が残っていた。少し話題を戻すが歯形については一つ気になることが
あった。
「犬歯が鋭くなってるんですよ」
「うわ、なんか吸血鬼みたいだね」
愛瑠はそう答えた。数分後に扉が開き灰崎憶人が入ってきた。彼は愛瑠の前に立つ。
「あぁ古井戸君、霊力について調べて色々サンプルと比べてみたよ。その男のサンプルがあった」
遅れてやってきた古守恭一は憶人がいった男の資料を持ってきた。南井という男だ。男で
あることは間違いない。本名かは不明。年齢も分からない。過激な霊能力者が集まった
テロリスト集団「フェンリル」の副団長を務める男だという。彼は対価と引き換えに都合の
悪い情報を消していた。
「でも少し犯人は絞れそうだね。一歩前進したよ。あ、そうだ。そのフェンリル若しくは
南井からして邪魔だった組織とか人はいるの?ちょっと気になったんだけど」
「そんなのは簡単だ。ここに決まってるだろ。霊能力なら証拠も残さずに済んで警察も
対処できない。普通の警察ならな。だけどここはそう言った事件を専門としている。
サイコメトリーなどの霊能力を持つ人間もいるんだ。殺人を犯すにしても尻尾を掴むことが
出来る厄介な警察だ」
恭一が答えた。
「数年前にこことフェンリルの交戦があってフェンリルは大半のメンバーが霊障対策課に
よって逮捕された。因縁があるって言った方が良いかな。今では身を隠してしまってるけどね。
フェンリルにはここに恨みがある人間が多いようだ。快楽殺人鬼もいるらしいし世間に対して
不満を抱える術師も多い」
憶人が補足説明を付け足した。
<二日目に分かったこと>
・歯形について犬歯が尖り気味だった
・複数人の歯形
→多くの人間が同じ死体に噛み付いた?
・今回の死体には霊的痕跡が残っていた。
・霊力はフェンリルという組織の副団長、南井の霊力
→事件の被疑者は個人ではなく団体の可能性がある
- Re: 霊障対策課24時! ( No.7 )
- 日時: 2020/04/20 16:21
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
累槻も調査に参加し始めた三日目。
主に情報は課長である柳水流愛瑠に最初に届く。課長、敬われることが多い立場だが愛瑠が
若いということで取っつきやすく友達感覚で接している者が9割を占めている。
「櫻井椿は子供を妊娠中、妊娠何か月かは不明。結婚相手の男は霊力も全くない一般人だな」
「そっか。ありがとう、色々調査にまで手伝ってくれて」
「気にするなよ。それより今は出かけているが藤原さんから伝言を頼まれてる。今は別の場所で
資料集めしてるよ…で、伝言は—」
式場にはどうやら発火術の結界が張られていたよ。移動すれば良いと考えるかもしれないけれど
お勧めはしないな。混乱を招き敵を逃がしてしまう。
それが伝言の内容。
「藤原さんの事だ。その術をどうにかしようと必死になってると思うぞ」
「そうだね。じゃあそっちは宋一郎さんに任せておこっか」
愛瑠と累槻は互いに頷き合った。
「どうかな?調査は順調かな?」
「あ、憶人さん!調べものはどうでしたか?」
「幾つか候補は出てきたよ。で、僕的に色々推測してみたけど今回の件で近いのはこれ…
人食いの呪いがかかった人間の一族、僕たちの中では屍鬼族と呼称している。既に消えかかっている
一族だからほとんど資料は残って無かったよ。でも消滅したとも報告されていない」
駆け足で愛瑠の机にやってきたピンクのメッシュ入り黒髪の女がピンクのカメラと数体の霊と
共に報告に来た。
「いたよ〜この子たちがね知ってるって話してくれたの。なんか若い女の子とおじさんが
話してて「ごめんなさい」「もうすぐ全て終わるから」って会話を聞いたって」
目黒ヒヨ、彼女はカメラで撮った場所にいる霊体を一定時間使役できる。時間が過ぎた後、
その霊は成仏するということで一緒に来ていた霊たちが成仏した。
「お、三日目はなんか沢山収穫できそうだな」
「時哉君たち!」
圓勺時哉と月足慧は二人でフェンリルの残党などを調べていた。どうやら南井以外の残党も
見つけたようだ。
「北見サナ、彼女はどうやら呪術師らしくて噛みついた人物の意識を奪って使い魔のように
従わせることが出来るようです。ほら、吸血鬼に噛まれたら噛まれた人も吸血鬼になるって
話があるでしょう?それと同じように彼女の術に掛けられた人間に噛まれたら噛まれた人間も
同じように支配される。凶暴化や人肉を好むようになる、筋力などが強くなるなどの効果も
あるようです」
「因みに霊障対策課のデータベースを調べたら北見サナの家族が霊障化、解呪不可能で
殺されたっていうのが残ってた」
少しずつ犯人とこの事件についてが繋がってきた。
<三日目に分かったこと>
・櫻井椿は妊娠中
・結婚式場に発火術式の結界が張られている
・屍鬼一族というカニバリズムの呪いにかかった一族が存在した(現在は不明)
・南井と行動する若い少女が事件に関与→北見サナ
・北見サナは感染系の呪術を扱う
→歯形は北見に操られた人間のもの?
・北見の家族は霊障対策課によって殺害処分された。
- Re: 霊障対策課24時! ( No.8 )
- 日時: 2020/04/20 16:46
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
調査四日目。藤原宋一郎は刑事課との交渉で死刑囚の尋問の許可を取った。尋問をするのは
愛瑠だ。
「私は外で聞いていますので」
「分かった。頑張ります!」
愛瑠はグッと拳を握った。深呼吸してから中に入ると白髪で顔の左上半部に大きな傷がある男、
東雲白亜だ。フェンリルの元、リーダーの男からフェンリルについて、若しくは南井や北見に
ついて聞こうと思っている。素直に答えるかどうかは知らないが聞くだけ聞く。
「おや、霊障対策課の課長というのは随分と若いですね」
「初めまして白亜さん。課長の柳水流愛瑠です。これから色々聞かせてもらいますね」
白亜は穏やかな笑みを浮かべたまま動かない。愛瑠は手元のメモに目を向けて一つ目の
質問をする。
1.フェンリルには何か「思想」はあるのか。
「死は救いですよ。大切な人がいない世界にいても苦しいだけ、価値などない。この苦しみを
幸福な人間に味わってもらう。知っていると思いますが我々は多くの苦痛を背負っている。それは
他人の苦痛でしか消せないんですよ」
「そうなの?まぁ半分は否定しないよ。笑わってきた人が笑われるとちょっとざまぁみろって
思っちゃうし。でも限度はあると思うなぁ…」
「ふふ、それは今、幸福だから言えるのですよ。まぁその思想は全体ではない。多くを殺そうと
する南井みたいな人間もいますから」
未だ白亜はうすら笑いを浮かべている。
2.救うために殺しているのか。
「それは違いますよ柳水流さん。私たちの意思で殺している、楽になるために殺しているのです」
「快楽じゃない?」
「そう捉えても構いませんよ。捉え方は人それぞれですから」
白亜は可笑しそうに笑った。
3.死刑によって自分は救われるのか。
「えぇ。手酷い殺され方で構わないのですが日本は随分と軽い…せめて地獄にさえ
行けたらよいのですけどね」
「まぁその辺は何も言わない」
白亜は頬を緩ませた。
結局、イマイチ分からなかった。
- Re: 霊障対策課24時! ( No.9 )
- 日時: 2020/04/20 18:07
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
五日目、調査は大きく動き出した。
霊障対策課とフェンリルの抗争。その時に関与した職員もいる。退職した者も少なからず
存在している。その中には敵に寝返った職員も存在する。こちらも可能な限り、小さな動きで
探っているが漏れている可能性も考えられる。一人の職員から霊的痕跡等が全くないと
報告を受けた。
「櫻井椿の義兄は15歳で消息不明になっています。彼女の母親と母親が結婚した二人の夫も
消息不明…」
憶人が呟くように言った。
昨日の最後、白亜は愛瑠を呼び止め囁いた。
「南井は止まりませんよ。だから…職員諸共大いに苦しみ絶望してくださいね、そして
恨んでください。それと南井が従わせている式神、あれはありとあらゆるものを削る…
ふふふ、楽しみにしていますね?貴方の絶望しきった顔を」
「舐めて貰っては困るよ。頼りになる仲間がいるからね。それとその言葉、そのまま返す!」
抗争時の被害者リストを見つけた。その中にある名前を見つけた。同じ苗字の男が職員として
今ここにいる。
「信慈君、少し良いかな?」
信慈を呼び止めた。名簿を見せると彼は顔をしかめる。
「自分の妹です。やっぱり柳水流さんには隠し事が出来ませんね…」
信慈の妹が抗争時に被害に遭い死亡してしまっていた。フェンリルとの抗争には色々と
彼は関わりが強いようだ。突然、愛瑠の携帯の着信音がして二人の視線は愛瑠の鞄に移った。
携帯を手に取り応答すると愛瑠は鞄を手に持って慌てた様子で近くの病院に向かった。
病院には既に数人の霊障対策課の職員がいた。
「みんな!」
「愛瑠さん!こっちです」
慧は愛瑠を呼んだ。部屋の白いベッドでは藤原宋一郎が眠っていた。いや、昏睡状態に近い。
「式場調査中に倒れたらしくて…」
「むぅ…これは、辛いわ。刺された様子は無い。それで確か飲み食いもしてないんだっけ?
ということは首謀者側にやられたって事か…」
愛瑠は目線を下げた。
「とりあえず病院を出よう。こっちは病院側に任せて私たちは今回の仕事を終わらせる。ね?」
職員たちは病院を出て行った。
<五日目・午前に分かったこと>
・フェンリルとの抗争で退職した中には敵側に寝返った者もいる
→今の職員の中にも抗争に関わった人間がいる(古井戸信慈等…)
・藤原宋一郎の昏睡状態
→首謀者側はこちらの動きに気付いている
- Re: 霊障対策課24時! ( No.10 )
- 日時: 2020/04/20 18:23
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
五日目の午後。霊障対策課にやってきた若い男は知念美弦と名乗った。そして屍鬼一族でも
あると言った。
「ほぉ、アンタが課長?珍しいねぇ若い女が課長とは…」
「あはは…では本題に入りますね。まず屍鬼一族についてお願いします。こちらには資料が無くて」
「あぁ、屍鬼一族は人肉を喰らう人間の一族。呪いみたいなもんだ。それと支配しようと
思って俺たちが噛み付いたらソイツは俺たちの思う通りだ。その能力は一族の人間の血が
混じってれば遺伝する。血液を与えれば感染時間も長引く。まぁここには霊力が強い奴が
わんさかいるから後者の効果は薄いだろうよ。で、他には?」
美弦は愛瑠の顔を見つめる。
2.北見について
「…久しぶりに聞いたな、その名前。なんか面倒くさい一家だった。奴らは昔から呪いを
他の人間に移すことが出来ないかと研究してたねぇ…ま、詳しいことは分からねえから勘弁してな」
男は愛嬌ある笑顔を見せた。
3.対峙した際に注意する点
「噛まれて感染したってんならここの奴らで解呪できる。問題は術で呪いを移された場合。
手遅れだからな、殺しちまえ。奴らは呪いを他人に移すことに特化している。血を流させるのは
禁手って奴さね。そういう類に弱い奴は触っただけで発狂するだろうし…」
「ありがとうございました。美弦さん」
美弦は立ち上がった。
「気にする必要はないさ。俺の代で本筋は最後さ。俺は死ぬまで迷惑をかけないように
森の奥でゆっくり生活させてもらう」
別の場所で宋一郎が残した占い結果のメモ。それは愛瑠の手元に入った。
櫻井椿→「屍鬼」
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