ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.4 )
日時: 2021/04/03 19:12
名前: ぶたの丸焼き (ID: XURzUbRL)

 4

 無機質な女の人の声が響く。
「ペリット五体の侵入を確認。Ⅳグループ、Ⅴグループの生徒は屋内へ避難、それ以外の生徒は、戦闘態勢を整えてください。繰り返します。
 ………」
 ペリットとは、魔物の名前。二つの属性の魔法を操れる魔物で、人々が出したゴミや、汚水などから誕生した。分類上は土属性となっていて、進化の過程で二番目の属性が別れる。現在確認されているのは火属性と水属性で、風属性は確認されていない。
「ペリット五体か、少ないね」
 スナタが言った。
「少ないに越したことはないだろ」
「それもそっか」
 しかし、リュウは苦い顔をしていた。
「油断するなよ。ペリットは一体だけでも強いやつは強い。それに、三属性の可能性だってある」
 私はスキルを使ってわかったことを3人に教えた。
「三属性はいない。でも、今此処に向かってるのは派生持ち」
 リュウと蘭は私が言ったペリットを確認するために、屋上の柵を腹に当てて下を見た。
「うえぇ」
 蘭が言った。無理もない。ペリットの見た目は、見ていて気持ちの良いものではない。どろどろした体表に、丸みのある体。ペリットが進んだ後には、泥が巻き散らかっている。
 しかも、二人が見ているペリットは、五体の中で一番大きい。つまり、一番強いということ。

 ぶわっ

 大きな茶色の塊が降ってきた。ベチャンと気持ち悪い音をたてて、ペリットは着地した。泥が跳ねたけれど、私たちには当たらなかった。
「仕方ないか」
 蘭は火の玉を投げつけた。
 あ、蘭はわからなかったのか。

 ヒュオオオオ

 ペリットがはいた冷気により、火の玉は相殺し、消えてしまった。
「水の派生、氷の魔法。蘭は相性が悪い」
「早く言ってくれよ!」
 蘭に恨めしそうな目で見られてしまった。
「ごめん。でも、わかると思った」
 蘭はすねたような顔をして、そっぽを向いてしまった。子供っぽいな。
 蘭は光と火の魔法使い。一応他の属性も操れないことはないけれど、苦手としている。
 スナタは風使い。土だけならまだしも、氷が入ると難しいと思われる。蘭のように、魔法が相殺する可能性が高い。
 となると、リュウの出番か。
 水だけなら、氷には負けてしまう。しかし、闇ならどうだろう。
 リュウも同じことを考えたようで、【ブラックホール】を発動させた。

 ズオオオオッ

 空中に黒い渦が発生した。渦からは強い風のようなものが発生し、ペリットを飲み込もうとしている。
 ペリットの体表の泥が次々と渦に飲み込まれ、ペリット自体も浮かび上がろうとしている。
 だけど。
「リュウっ! 駄目、魔法を解いて!」
 私の言葉を聞いて、リュウは目を見開いた。
 幸い私の言葉の意味を理解してくれたようで、リュウは魔法を解いた。
 そして、私は魔法を発動させた。

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