ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.101 )
日時: 2021/04/28 06:26
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: iTHoKTwe)

 18

「日向、ごめんな」
 二人が日向に謝罪し、学園長に断りをいれて退室した直後に、おれは言った。
 なんのことかわからずに、日向は不思議そうに首を傾ける。
「『友人』なんて勝手に言ってさ」
 日向は、じぃっとおれの目を見る。

 気にしてないよ。

 そう伝えたいようだった。
「は? 君たち、友人じゃないのか?」
 驚きの中に呆れの混じった声で、学園長が言った。
「じゃあ、君たちの関係はなんだ? まさか色恋ではないだろう?」
「当然」
 おれの頬が紅潮するよりも先に、日向が言った。
「三人は、私を救ってくれるの。だから私は三人を守るの。利害関係」
 少なくとも、日向はそう思っているようだった。
「君のその盲目的な『信仰』にも、私としては不思議でならないんだけどね」
 学園長は苦笑した。
「用事は?」
 終わったのか、と、訊きたいのだろう。
「ああ、もう大丈夫だ。帰ってくれて構わない」
「あ、待って、日向! ジョーカーのこと、言わなくて良いの?」
 踵を返した日向の背に、スナタが投げ掛けた。
「いい」
 その足を止めること無く、日向は言う。

 ジョーカー。

 それは、誰なんだ?
 学園長まで、知っているのか。
 あの口ぶりからして、『組織』の一員。
 あるいは……。

 日向は、未だに、その正体を明かしてはくれない。

 たぶん、それは、日向の口から伝えられるのを、待つべきなんだと思う。

 でも。
 なあ、日向。
 おれは、さみしいよ。
 悲しいんじゃない。少し、ニュアンスが異なる。
 日向にとって、おれが蘭やスナタと違うのは、知ってる。
 でも。
 なあ、日向。
 いつか、いつか。

 おれに心を、開いてくれるか?

 第一幕【完】