ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.103 )
日時: 2021/05/01 07:40
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: yV4epvKO)

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「日向、ありがとう」
 日向は、おれを見た。
「おれを、否定しないでくれて」
 珍しく、日向の瞳が、わかりやすく、揺れた。
 学園長とのやり取りのような、ふざけた雰囲気ではない。

 真剣な表情の中に、動揺があった。

「リュウが」
 日向が言葉を発する。
「私を、否定しないから」
 わかりやすく、切なさを感じさせる表情をした。
 本気で、おれを想ってくれているのだ。
 それだけで、おれの、生きる理由になる。
 日向は、おれに、存在理由を与えてくれる。

 どさっ

 突然、音がした。
 本が落ちるような、そんな音。
 地面は揺れたりしなかった。本棚から落ちるなんてことはないはずだが。
 そう思って、おれは音がした方向へ、振り向いた。

 女の子がいた。

 ぼさぼさではね毛だらけの黒い髪。
 焦げ茶のような肌の色。
 おどおどした、漆黒の瞳。
 おれよりも少し高い、大柄な体型。
 白布のベールからちらっと見える、羊のような、灰色の角。
 身に付けるリボンの色は、Ⅴグループの証である、赤。

 おれたちの会話を聞いていたのか、顔が真っ赤だ。
 うん、端から見れば恥ずかしい会話をしていたのは、認める。

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