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ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.107 )
- 日時: 2021/05/09 00:55
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: 6k7YX5tj)
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「あー、あんなの、ガキじゃねえか」
おれは後悔の念に苛まれていた。
「謝るくらいしろよな」
他人事のように、現実逃避のように、呟く。
おれは、学園内の森にいた。家に帰ることもできたけど、それじゃあ逃げるままになってしまう。
かといって、謝る『くらい』のことすらできない。
「情けねえ」
おれがため息を漏らした瞬間。
『ああ、情けねえな。本当に』
聞くはずのない声。
頭の中で響く声を聴いて、どくんと心臓が跳ねた。
なんで。どうして。
まだ、薬の効き目は切れていないはず!
『よお。起きたぜ。わっかりやすく落ち込んでんな、交代してやろうか』
にやにやと笑う『あいつ』の顔が、脳裏に浮かぶ。
やめろ。
拒絶を示した。
『そう言うと思ったぜ』
言葉が続く。
『久々に寝て起きてみれば、お前はなにやってんだよ。まあたあいつのせいでくよくよしてんのか?』
おれは、ぎりっと歯を食い縛った。
こいつの言葉は、的を射ている。
薬の効果は、本来ならば、短くても三日は持つ。それが二十四時間も経たずに切れてしまったのは、おれの精神状態が原因だ。
『そのとおり。不安定なんだよ、いま、お前は。この意味が、わかるよな?』
は?
『運が良いぜ。こんなに短い期間に二回も乗っ取れるなんて』
おい。
『二回とも原因はあいつに対するお前の精神の揺らぎだしな』
おい!
「やめ」
やめろと言い切る前に、おれは意識を失った。
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