ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.108 )
日時: 2021/05/09 00:55
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: 6k7YX5tj)

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 いまは、なんだ。
 おれは、いま、どうしてる?

 ああ、そうか。
 乗っ取られたのか。

 情けないな。

 意識を乗っ取られている間は、おれは、魂だけの存在になっている。
 意識は、五感。このかん、おれは、外からの刺激をなにも感じることは出来ない。
 出来るのは、考えること。

 それだけ。

 重さも体の輪郭も、なにも感じない。
 感じるのは、体があるのだという、錯覚。
 目が見えるのだという、耳が聞こえるのだという、錯覚。
 それ故に生じる、なにも見えない、聞こえないことへの、不安、虚無感。

 それだけ。それだけ。

 いまのおれには、何もない。

 出来ることは、考えること。
 自分の過ちを、ひたすら思い返すこと。

 なんで、あんな風に、怒鳴ってしまったんだろう。
 決してしないようにしていたのに。
 日向にだけは。
 日向にだけは。
 そうやって、抑えてきたのに。

 どうして。
 どうして。

 どうして。

 ……嫌われたくない。

 日向。日向。

 唯一おれに、救いを与えてくれた存在。
 唯一おれに、希望を与えてくれた存在。

 唯一おれに、光を与えてくれた存在。

 日向を失えば、おれは、生きている意味を失うんだ。

 もしもいま体があれば、おれは震え出していたに違いない。
 恐怖なんて生ぬるい。

 日向には、日向にだけは。

 嫌われたくない。

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