ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.11 )
- 日時: 2022/07/21 20:08
- 名前: ぶたの丸焼き (ID: EjFgzOZO)
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学校が終わると、生徒は我先にと教室を出る。ある者は家に帰り、ある者は寮へ戻る。私は自分の家を持っているので、ほうきで通学している。寮で暮らしている生徒は馬車通学で、距離にして七キロ。朝の七時半と八時の二回、寮の馬車停に停まる。歩いて教室まで来るという手もあるが、時間は一般の生徒で一時間半。賢い方法とは言えない。
教室の後ろのロッカーに行き、ほうきと鞄を取る。
この学園は校則が緩く、この二つにしろ髪型にしろ、特に細かい指定はない。高価なものなどは、何かあっても自己責任ということになっている。
私の鞄は茶色のよくある手提げ鞄。祖父が入学祝にと買ってくれた物だ。ほうきは自分で選んで自分で買った。これは鞄以上の生活必需品なので、きちんと自分に合うものを選ぶ必要があったのだ。
黒い柄に金粉が撒かれ、夜空のごとく美しい。ほうきの先はペガサスの羽で出来ている。かなり値を張る代物だが、丈夫で大きさの割には軽いし、スピードの限界値も大きいうえ、調節もしやすい。決して高い買い物とは言わないだろう。周りからは変な目で見られるが、気にしない。ちなみに、何度か盗まれかけた。
鞄の中に荷物を詰め、帰り支度を済ませると、私は教室を出た。廊下は賑やかで、煩い。さっさと帰ろう。
ほうきの使用は門を出てからと決められている。ここはしっかりと守らせられていて、何度か生徒指導を受けている生徒を目撃した。
階段を下りて、渡り廊下を幾つか歩き、第一館、本館とも呼ばれる建物に辿り着いた。入校したてらしい生徒は、はあはあと息切れしている。ご苦労なことだ。
靴箱で通学靴に履き替えて、第一館を出る。真正面に巨木がどっしりと生えて、生徒を見守っている。……らしいのだが、どう見ても圧迫感を感じる。門のとなりの大壁は端が見えない。この学園の面積は一ha(ヘクタール)を悠に越えるらしい。
「そこの君、危ないよ!」
馬車馬の騎手が私に声をかけた。私はペコリと頭を下げて、足早に門へと向かう。
門を出て、少し脇に逸れると、私はほうきにまたがった。
ふわっ
一気に飛び出しても良いのだが、人にみられると色々と面倒なので、無難にゆっくり上昇する。
私は学園を見た。
[国際立聖サルヴァツィオーネ学園]
『サルヴァツィオーネ』などと大層な名前だが、殆んどの人(人外も含む)はそう呼んでいない。
この学園には、『異常者』が集められている。能力異常者や、容姿的異常者、性的異常者など、様々だが、とにかく、異常者ばかりだ。私も異常者で、リュウも、蘭も、スナタも、異常者だ。故に、この学園の生徒は「化け物」と呼ばれ、この学園自体、『化け物学園』通称『バケガク』と呼ばれている。
何故こんなことを考えているのだろう。急に馬鹿馬鹿しくなって、私はさっさと家に帰った。
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