ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.110 )
- 日時: 2022/10/06 05:15
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: 4CP.eg2q)
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唐突だった。
意識が戻ったということだけで言えば、そうではなかった、予兆はあった。
でも、それらが一度に起こったのだから、やはり、唐突だったと、感じてしまう。
まず、体があるとすれば、地面がそのまま大きく揺れたような感覚がした。
次に、体があるとすれば、地割れに体が落っこちるような感覚がした。
最後に、体があるとすれば、胸を強く蹴られたような、強い衝撃が加わった。
痛みはない。
意識の真底が痙攣したような、それでいて激しい振動が、突如としておれを襲った。
そして、気づけば、おれの視界には色が差し、おれの耳には森の木々のざわめきが聞こえていた。
こんなこと、滅多にない。
確かにいつも、気づけば意識はもとに戻っていた。
けれどこんな、言葉にすれば乱暴な衝撃と共に『覚醒』するなんて。
ああ、そうか。
『強行突破かよ、ったく』
なんとなく気だるげな声。
強行突破か。
間違いない。
「リュウ、平気?」
瞳の奥を微かに揺らして、日向がおれに問う。
光の差さない、虚ろな目が、まっすぐおれを見ていた。
おれはひざをついていて、日向を見上げる形になった。ひざをついているということは、あいつは日向と戦闘したのかな。そのわりには、おれの体にはどこにも傷はない。
木々の隙間から漏れた日の光が、日向の髪に当たる。逆光で日向の表情はよく見えない。けれど、雰囲気と声で、おれを気遣ってくれているのがわかる。
「うん、平気だよ」
おれがそう答えると、五秒ほどはそのままだったが、不意に、緊張の糸がほどけたように、日向は、ふう、と、ため息をついた。
「そう」
【闇魔法・潜在覚醒】
この魔法は、俗に言う黒魔法。黒魔法と闇魔法は同じものだが、そう言った方がわかりやすい。
なんせ、本来悪魔が使うものなのだから。
人間が奥底に秘める欲求を無理矢理引きずり出し、悪魔はその人間を言葉巧みにコントロールする。
正規の用途は、これだ。悪魔に正規もなにもないけど。
それを日向は、おれの意識を強制的にもとに戻す技として使うことを思い付いた。
魂に干渉する魔法なので、日向はあまり使いたがらない。
余談だが、黒魔法という名称は、この世界の創造神が使っていたとされている。そういえば、前に読んだ書物には、誤りがあった。
それにしても、なんで日向は今回この魔法を使ったんだ?
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