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ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.112 )
- 日時: 2021/05/09 00:59
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: 6k7YX5tj)
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「日向、もういい」
「うん」
日向はおれから体を離した。
それから、おれの目を見て。
ほんの少しだけ、笑った。
どくんと、心臓が跳ねた。
作り笑顔なのは、わかる。
『あのとき』と比べてしまえば、わずかな違いがおれたちならわかる。
でも、あまりにも穏やかな笑みで。あまりにも優しげな笑みで。
おれはおもわず、見とれてしまった。
日向は最後にもう一度だけおれを抱き締めたあと、言った。
「じゃあ、リュウ、戻すよ」
「ああ、頼む」
それなのに、日向はなにもしない。
「?」
不思議に思っていると、突然、日向の左手が伸びてきた。
ひんやりとした感触が、右目の目元にふわりと感じた。
「っ!」
拭いきれてなかった涙があったのか。
恥ずかしいやら情けないやらで、またおれの心臓の音は大きくなった。
日向の右手が、おれから離れる。
途端に、頭で声がした。
『なあにやってたんだよ、お前らはよお。仲良しごっこか?』
うっせえな。関係ないだろ。
「リュウ」
「大丈夫だ。心配すんな」
日向を安心させるために、笑って見せた。さっきとは違って、うまく笑えているはずだ。
【光魔法・意識鎮静】
先ほど日向が使った【潜在覚醒】に対抗するために『開発』された、対抗魔法。
これを使うことによって、『あいつ』の意識を一時的に沈めることが出来る。ただし、おれたちの場合は特殊なので、術者、つまり日向がおれに触れていないとかからない。まあ、日向だから触れるだけで魔法の効果を発揮できるんだけどな。
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