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ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.113 )
- 日時: 2021/05/09 01:00
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: 6k7YX5tj)
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おれたちは図書館に戻ってきていた。てっきり日向はもう帰ると思っていたから、少し驚いた。
「日向も、なにか調べものか?」
「違う。新しい本が入ったから。そのつもりはなかったけど、ついでに」
『情報がすっくねえな、相変わらず』
同感はしたくないけど、同感だ。
まあ、日向と一緒にいる時間が増えたから、嬉しいけど。
「借りるのか?」
「うん」
そんなことを小さな声で話していると、またパルファノエさんに会った。
椅子に座って静かに本を読んでいたようだったが、物音に気がついたのか、こちらを見て、跳ねるように立ち上がった。
「は、花園先輩! と、笹木野先輩。あれ、えっと」
おれは苦笑いした。
「さっきはごめんね。急に走っていったりして」
「いえ! わたしこそ、なんだかごめんなさい。余計なことしてしまいましたか?」
「そんなことないよ。大丈夫」
二人でなにか話したりしたのかな。
そう思って日向がいた場所を見ると、もうそこには誰もいなかった。
ん?
『どっか行ったぜ。本でも取りに行ったんだろ』
わ、わかってるよ、そのくらい。
「あ、あの」
パルファノエさんが、おれに話しかけてきた。
「お二人は、仲が良いんですね」
あれ?
おれは彼女が人見知りだと思っていたので、急にこんなことを言われて、少しだけ戸惑った。
その少しだけ空いてしまった間に耐えられなくなったのか、パルファノエさんは両手で顔を覆った。
「すっすみませんこんなこと突然聞いたりして迷惑ですよねごめんなさい噂で聞いていた通りだったので気になってしまってつい」
「お、落ち着いて。大丈夫だから」
入学理由は、この時折くるパニックかな?
おれはそんなことを、やや現実逃避ぎみに考えた。
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