ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.114 )
- 日時: 2021/05/09 01:01
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: 6k7YX5tj)
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「ううう、すみません」
しょんぼりと肩を落として、パルファノエさんは落ち込んでいた。
「おれは気にしてないから、そんなに気にしないで」
「はい、すみません……」
『こいつ、うじうじしてて気分わりいな』
黙れ。
「リュウ」
いつのまにか戻ってきていた日向が、背後に立っていた。
「用事、あるんでしょ。行ってきたら?」
うーん、それもそうか。この子に構う義理は正直言って、ない。単純におれが放っておきたくなかっただけだ。だけど、このままじゃいつまで経っても用事が済ませられない。
「うん、わかった、行ってくる」
でも、やっぱり気になるから、出来るだけ早く戻ってこよう。
おれは図書館を歩き回った。何度も来ているので、迷うことはない。
この図書館は、フロアごとに置いてある本が大まかにわけられている。
一階には、参考書などといった、生徒が勉強するためのものが置かれている。図鑑なんかもあったりする。
二階は、娯楽もの。小説だったり漫画だったり、とにかく見て楽しむものがそこにある。学習漫画が曖昧なラインで、一階にあったり二階にあったり、定まっていない。
そういえば、日向の口ぶりからして、借りたのは小説な気がする。おれたちがいたのは一階だから、うん、とんでもない速度だな。いまさらだけど。
三階が、一階にある本よりも、さらに詳しく内容が書かれた、専門書などがある。ジャンルも幅広いので、ヲタク……ああ、いや、物事に対する追求心がとても強い生徒に大人気だ。
そして、四階。ここがおれの目当ての場所だ。
「こんにちは、番人さん」
おれは四階用につくられた受付台に座る番人さんに話しかけた。
この図書館の管理は、兄弟でやっているらしい。どっちが兄で弟なのか、それどころか本当の名前すらもわからない、謎の人(なのかも不明)たちだ。見た目通りならば、かなり長い年月を過ごしてきたのだろう。長い髭も、ローブに隠れてよく見えない髪も、真っ白だ。ちなみに、一階にある受付台にいる人は、『守人さん』だ。慣れていないとたまに噛む。
「やあ、笹木野君じゃないか。久し振りだね。閲覧かい?」
番人さんは、真っ白なきれいに整えられた髭を撫でた。
「はい、お願いします」
番人さんは手早く手元の用紙におれの名前を記入した。これを見ていると、若いんだか老いているんだかわからない。
「よし、いいよ。入って」
おれは丁寧にお辞儀した。
「ありがとうございます」
番人さんから鍵を受け取り、鎖でぐるぐる巻き(厳密には違うが、そう見える)にされた扉にある、南京錠の鍵穴に差し込んだ。
かちりと心地よい音がして、南京錠が外れた。
鍵は帰りに返せば良いということになっているので、扉を押し開け、中に入る。
四階は、古代の書物が揃っている。
学園長が、バケガクの生徒のためにうんたらかんたらと各国の国王を押しきり、ここまでの、広い四階を埋め尽くすだけの書物を集めた。こんなところは、世界全体を見ても有数だ。
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