ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.116 )
日時: 2021/05/09 01:03
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: 6k7YX5tj)

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 ん?
『どうした?』
 いや、これを見つけてさ。
 って、なんでおれはこいつと普通に話してるんだよ!
『なに一人で漫才してるんだよ。
 その本がどうかしたのか?』
 ……。

 おれは不本意ながら、会話を始めた。

 これだよ。『キメラセル神話伝』。
『なんだ、神話かよ。いまさら神話なんか読んだって意味ねえだろ』
 いやまあ、それはそうかもしれないけどさ。やっぱり、気になるんだよ。
『ふうん? まあ、好きにしたらいいだろ。てか、勝手にしろ』
 言われなくてもそうするよ!

 だんだんとイライラしてきたおれは、そこで会話を切った。他に人もいないので、その場で、分厚い本をめくる。

 この世界には、神が存在する。太陽神に月の女神に、死神なんかもいたりする。
 そして、『キメラセル神話伝』の中で、その神々の頂点に君臨する神がいる。

 それが、『ディミルフィア神』。

 万物の創造と破壊を司る神だ。この世も、ディミルフィア神が創ったと伝えられている。終焉の規則性を創ったのも。

 この世界には、大きくわけて二つの宗教がある。しかし、どちらの宗教の神話に登場する神々も、全くと言っていいほど、同じだ。つまりは、『どの神を頂点とするか』、これでわかれているのだ。

 そこまで考えて、おれは、本を閉じた。ろくに読んでいないけれど、内容は既に頭に叩き込んである。
 そして、もう一つの神話、『ニオ・セディウム神話伝』があるのか探し始めた。

 これは、ディミルフィア神と敵対関係にある、『テネヴィウス神』を、神々の頂点と崇める神話だ。
『キメラセル神話伝』の近くに置いてあるとは思わないが、もしかしたらあるかもしれない。

 おれはキメラセル教信者でも、セディウム教信者でもない。つまり、なんの宗教にも属していないのだ。神を信じていないわけではない。神は存在する。その事を疑ったことは、ただの一瞬としてない。でも、信仰もしていない。

 否、したくもない。

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