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ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.119 )
- 日時: 2021/05/21 13:50
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: KBFVK1Mo)
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「なにか、勉強のコツとかあるんですか?」
「Ⅴグループの私に聞いても、意味ない」
日向が無表情のまま、言った。
うん、まあ、常識的に考えてそうだよな。成績が悪いからⅤグループなわけだし。
実際にどうかはともかくとして。
「帰る」
日向はおれを見て言った。
「日向の用事は終わったのか?」
この様子を見ると、おれが四階に行ってから、ずっとパルファノエさんと話していたように思える。パルファノエさんを気づかって帰らなかった、なんてことはまず無いし、どうして帰らなかったんだろう。
「うん」
日向の目が、じっと、おれの目を見つめる。
ああ、そうか。
心配してくれていたのか。
「ありがとな」
心の奥で、じわりと、温かいものが広がる。
パルファノエさんの前だから、言うのは少し迷ったけど。
でも、それでも。
伝えたいから。
日向は微かにすら表情を変えずに、ただ一度、浅く頷いて、おれに背を向けた。
「また教室でな」
いつものごとく、返事はないけど。
おれの心は満たされていたので、なにも感じない。
『なににやついてんだよ、きもちわりぃ』
なんで見えてないくせに笑ってるなんて言えるんだよ 。
『頬の筋肉の状態でわかるんだよ』
既にわかっていて、いまさらなことを話していると、パルファノエさんが顔を真っ赤にしているのに気づいた。
「じゃあ、おれも帰るよ」
「へあっ! あ、はい! ありがとうございました!」
「うん」
おれは一応笑顔を見せてから、パルファノエさんに手を振って、その場をあとにした。
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