ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.12 )
日時: 2022/01/29 13:28
名前: ぶたの丸焼き (ID: i8PH9kfP)

 7

「ただいま」
 家はシーンと静まり返っている。良かった。祖母は来ていないようだ。あの人は勝手に家に入ってくるから嫌だ。普段はいい人だけど。そろそろ家の鍵を変えるか。帰る度に確認するのは面倒だ。
 私は靴を脱いで、靴箱へしまった。物は出来るだけ見えなくしたい主義なのだ。

 ガチャッ

 玄関に立っている人に家の中が見られないように、家に入ってすぐのところにはドアがある。そこを開けると、廊下で、階段や風呂やトイレがある。そこの先に、リビングがある。が、その前に、私は洗面所へ行った。

 ジャーー

 水の流れる音を聴きながら、手を洗ってうがいを済ませ、タオルで手などを拭いた後、ふと、鏡が目に入った。
 ウェーブのかかった金髪に、右目が青と左目が白のオッドアイ。よく死んだ目をしていると言われる。
 金髪に青眼せいがんは天使の特徴とも言われ、私は端正な顔をしているらしく、幼い頃は「アンジェラ」と呼ばれることもあった。
 しかし、母は、いや、父や、他の大人も、私の左目の白を気味悪がった。白の見た目を持つ者は大変少なく、歴史上でもすみに追いやられてきた。そして母は、私を「ネロアンジェラ」と呼び、蔑んだ。白なのに黒とは、変だと思ったが、私をどう呼ぼうと母の自由なので、触れないでおいた。
 さて、リビングに移動し、ソファに荷物をおいて腰を下ろすと、私は呟いた。
「ステータス・オープン」

 ぶおん

 青白い光が部屋を包む。ステータスを確認するのは私の日課で、特に意味はない。
『【名前】
  花園 日向

 【職業】
 ・魔導士 level 58……

 【スキル】
 ・鑑定 level 33
 ・察知 level 40
 ・索敵 level 42……

 【使用可能魔法】
 ・光属性
  └光魔法 拘束類……
  ……』

 変化はなし。結局とどめはさせなかったからな。
 さてと、夕飯の支度をしないと。今日はオムライスにしよう。

______________________

 時計は十時を示している。そろそろ寝る時間か。
 私は自室を出て、右に進んで二つ目の部屋に入った。
 ごちゃごちゃと色んな物がそこには散らばっている。あれから数年経っているのに、なかなか終わりが見えてこない。
 そうは言っても、仕方のないことだ。私は適当に近くに落ちていたテディベアを掴んだ。三歳の誕生日に父がくれたものだ。テディと名付け、大切にしていた。
 私は部屋の中央に描かれている魔法陣の中心にテディを置いた。私が手を振り、魔力を流すと、魔法陣の周りの蝋燭ろうそくに火が灯った。
「お母さん、お父さん」
 じわじわと、テディが燃えていく。

 「お や す み な さ い」

 8 >>13