ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.121 )
日時: 2021/05/21 13:58
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: KBFVK1Mo)

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「日向、おはよう」
 おれが教室に来る頃には、既に日向がいた。長期休みの明けの初日ということもあり、まだあまり生徒は登校していない。おれも、全体でみれば早い方だ。
「うん」
 日向は頷いた。
「放課後、空いてる?」
 そして、急にこう言った。
「え? うん」
 どうしたんだろ?

 ああ、薬の件か。
 いまは、少ないながら何人かは教室にいる。あの人たちの前で薬は受け取れないもんな。

『お前ってさ、肝心なところで渇いてるよな。事実だとしても、もうちょっと期待とかしねえの?』

 は? 期待? 何をだよ。

『いや、なんでもない』

 ?

 まあいいや。こいつのことなんて気にしても、なんの得もない。
 早く放課後にならないかな。

「あの、花園さん」

 おずおずと、クラスメイトの松浦さんが、日向に話しかけた。
 日向は無言で松浦さんを見た。それだけでは松浦さんは何も言わず、日向はため息を吐きそうな雰囲気を出して、言った。
「なに」
 松浦さんはびくっと震えたあと、か細い声で用件を話した。
「は、花園さんに用がある男の子が、教室のドアのところにいて、それで、呼んでほしいって」
「わかった」
 日向は礼も言わずに教室の入り口に向かった。

 相変わらずだな。
 思わずおれは苦笑した。
 それにしても、誰なんだろ。日向に用がある男の子って。

 いや確かに日向は正直言って愛想は悪いけどそれを補ってあまりあるくらいにかわいいし容姿端麗だしきれいだから一目惚れなんてされてても全く不思議じゃないしだけど日向は《白眼の親殺し》で有名だからそれを知らない方が珍しいからそれを踏まえて好意を持つなんてなかなか無いことだしでもそれでもこんな朝早くの人目が比較的少ない時間帯を狙って日向に会いに来るなんて一体どんな奴……

『だーっ!! うっせえな! そんなに気になるんなら見に行けば良いだろうが!!』

 なに言うんだよ。気になるから見に行くなんてそんなガキみたいなことするわけないだろ。
『そうやってうじうじ考え込んでる時点で十分ガキだっつーの! さっさと行け! そして黙れ!』
 おれはしばらく悩んだあと、ついに感情に抗えなくなり、日向のもとへ行った。

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