ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.126 )
- 日時: 2021/05/21 14:02
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: KBFVK1Mo)
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だけどそれはほんの一瞬のことで、朝日くんはまた、怒ったように、甘えるように、日向に言った。
「それで! 姉ちゃん、こいつのことどう思ってるの?」
日向は首を傾げた。
「大事」
首を傾げる、という動作はしたものの、その言葉に疑問符は付いておらず、はっきりと言い切る口調で言った。
「なんでなんで! 普段なら他人になんか興味持たないじゃんか! どうしてこいつならいいのさ!」
そうやって駄々っ子のように地団駄を踏みそうな勢いで日向に問いかける朝日くんを見て、おれは、この子は何歳なんだろうと現実逃避気味に考えた。
「どうしたの」
「え?」
「どうしたの」
日向が繰り返し、二回、朝日くんに問いかけた。
「そんな子供みたいなこと、昔の朝日はしなかった」
朝日くんはしばらくぽかんと口を開けて、それから、ぷくうっと頬を膨らませた。
「なんだよ! ボクが子供みたいだって言うの?!」
「そう言った」
「姉ちゃん酷いよー」
絶対おれ、蚊帳の外だよな。おれのこと忘れてないか? うん、まあ、いいけど。
と思っていたら、朝日くんが唐突におれを見た。おれを見た。
「ボクの方が姉ちゃんのことを知ってるんだからな!
『あの事件』のことだって、ボクの方がよく知ってるし!!」
そんなこと言われても、反応に困るな。
そりゃあ朝日くんは実の家族なんだから、おれよりも『日向』のことをよく知っているに決まってる。
「あれ?」
おれがどう答えようかと考えていると、朝日くんは不思議そうに日向を見た。
「姉ちゃん、事件のことこいつに喋ったの?」
もっと訝しげに反応するべきだっただろうか。
日向は厳しい目を向けた。いや、さっきから朝日くんに対して、向けていた。朝日くんと目が合い、その厳しさが僅かに緩んだ。
そして、ゆっくり首を振った。
「言ってない」
言葉を続ける。
「言う必要、無いから」
何の話だ? 事件のこと?
……ああ。
・・・・・・・・・・・・・・
「『両親を殺したのは日向じゃない』ってことか?
・・・・・・
それなら、わかってるぞ」
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