ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.134 )
- 日時: 2021/05/22 09:16
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: OypUyKao)
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『八年前、大陸ファーストを騒がせた『白眼の親殺し』。我々は、あの事件の犯人である花園日向のその後を知ることに成功した。
あの事件以来、彼女が悪影響を及ぼしてしまうとして住居をわけられた弟が、長い時間をかけて、姉と共に再び暮らしたいと、引き取り手である祖父母に訴えているそうだ。
彼は今年度より姉と同じバケガクに通い始めているらしい。……』
小さな場所にびっしり埋め尽くされた文字を見て、おれは驚きや怒りが沸いてきた。
日向が一人暮らしなのはもちろん知っていた。弟、朝日くんが祖父母に引き取られていることも。
けど、二人暮らしをするだなんて知らなかった。いや、もしかしたら、日向も知らなかったのかもしれない。だって、日向の様子からして、朝日くんを自分から遠ざけたかったように思える。
その証拠がまさしく、この記事だ。
言葉自体は、『花園日向のその後』となっているが、この記事はどう見ても朝日くんについてだ。つまり朝日くんに関する情報を、日向がガードしていなかったということになる。
つまり日向は、朝日くんに対してなんの干渉もしていなかったのだ。
そして、そうやって日向は、干渉しないようにしていたのに、この記事を書いた記者は、その八年間を壊した。それにその記者は、未だに日向を追い、日向の情報を発信し続けていたのだ。そのことには、怒りしか感じない。
当然、権力を行使して記者を探し当てるような真似も、ましてや業界から追放するような真似もしない。 そういったことは、あまりしたくないのだ。
それに、おれが日向に巡り会えたのだって、何を隠そうこの新聞を発行している会社、そしておそらくこの記事を書いた記者のお陰なのだ。全く恩を感じていないと言えば、それは嘘になる。今回の記事だって、それは同じだ。
そんな、自分はいいけど他人は駄目みたいな、自己中心的な考えが自分の中にあることを自覚して、おれは吐き気がした。これじゃあまるで、『あいつら』と同類だ。
胸糞の悪さを和らげるために、おれは二、三回、胸の辺りを、強く、撫でた。
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