ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.145 )
日時: 2022/10/10 22:09
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: 9nuUP99I)

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「認識が、異なる?」

 与えられた情報だけでは理解しきれなかったらしく、七草さんは日向の言葉を繰り返した。
「どういう意味だ?」
「どういう意味もなにも、言葉通り」
 日向は腕を組んだ。
「私は龍馬を上に見てるし、龍馬は私を上に見てる。私たちの関係は、対等でもなければ、上下でもない」

 その通りだった。そのことは、おれも自覚している。
 けれど、こんな感覚は、一般の人には理解できないのだろう。七草さんは相変わらず首を捻っている。

「友達では、だめなのか?」
「だめ」
 だけど、と、日向が付け加える。
「でも、それは私たちの認識。第三者から見れば、どうやっても、友人同士にしか見えない。
 だから、おじいちゃんがする認識としては、それで良い」

 七草さんは頷いた。

「そうか。では日向、龍馬、くんとは、いつ知り合ったんだ?」

 言葉を少しつかえさせたのは、きっと、おれの呼び方に悩んだせいだろう。
 日向は眉をつり上げた。当然ながら、その端正な顔立ちが崩れることはなかった。当然ながら。

「言う必要がない」

「それはそうかもしれないが、天陽族として、黙って見過ごすわけにはいかない。知り合った経緯だけで良いんだ」

 そう言って、浅く頭を下げる。

「姉ちゃん、ボクからもお願い! 教えて!」

 日向が大切にしようとする『家族』の枠組みに、祖父が入っているのかはわからない。日向が言葉を発した理由が、七草さんがその範囲に入っていたからなのか、それとも朝日くんが便乗したからなのか、おれは判断できなかった。

「六年前」

 それは、おれと日向が『初めて出会った』頃のこと。

「龍馬がバケガクに入学した、六年前の入学式」

 日向はそれだけを告げると、再び、口を閉ざした。

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