ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.15 )
- 日時: 2020/12/13 07:16
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: RadbGpGW)
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二限目は魔法石を作る授業。精霊とのコミュニケーションというか、共同作業をすることで、精霊と親睦を深めようというのだ。毎年これをしている。
「はーい、注目。今からⅣグループ以下の生徒にMPポーションを配りますよ」
ライカ先生が言った。今年も魔法学精霊科はこの人が担当なのか。
リュウに言ったら気づくのが遅いと言われるのだろう。
魔法石を作るのには大量の魔力を消費する。そうだな、Ⅴグループの生徒は全消費するんじゃないだろうか。足りない分は精霊が補ってくれる。つまり、精霊の負担が増えるのだ。
この学園には昨日のようにしょっちゅう魔物がやってくる。そのときに魔力がないと死んでしまうので、必ず元々の魔力量が少ない生徒には、MPポーション(魔力回復ポーション)が配られる。当然私にも配られるのだが、総合レベル50を越える私には必要ないのだ。飲まなければ面倒くさくなるので飲むが。
ライカ先生は私にポーションを手渡した。
「ありがとうございます」
半透明な紫色はD級の印。ポーションをはじめとする階級やランクは、GからA、そしてSに分けられる。色もそれぞれ分かれており、したから黒、橙、赤、紫、青、緑、黄、白とある。もちろん効果も比例して強くなる。D級ポーションのようなものは、一般人からしたら貴重品だ。人によっては家から持ってきたG級ポーションを二、三本飲んで、D級ポーションはこっそり家に持ち帰ることもある。
「それでは皆さん、手元の石を見てください」
さてと、授業が始まるようだ。ライカ先生はポーションを配るときに石も一緒に置いていたのだ。なんの変哲もない、ただの石だ。これを魔法石に変える。
「まずは、精霊と意思を通わせましょう。お互いの魔力をお互いの魂に流し合い、共有するのです」
この微調整が難しい。私の魔力量は異常なので、全て流してしまうと、いくら精霊でも耐えられないのだ。ましてや仮契約で、結びたてだとなおさら。
リンは私の机にちょこんと座り、じっと私の目を見た。私も見つめ返し、ゆっくり魔力を流す。
スウゥゥ
じわじわと、自分以外の魔力が体に染み込む感覚がする。これが不快だと精霊も不快と感じており、意思を通わすことなど到底不可能となるのだ。
しかし、今はそれがない。どうやら成功しそうだ。
今度は流した魔力をこちらに戻す。繰り返していると魔力の出し入れのタイミングが合い、 魔力が混ざり合う。これで、意思が通じ合ったことになるのだ。
私たちは頷き合うと、石を見た。
リンは風の精霊。よって、魔法石も風の魔力が宿る。
「『ヴィチローク・ピチァーチ』」
私たちが同時に唱えると。
ゴウッ
大量の風の魔力が私たちの身体から抜け、石に吸収されていった。
緑色の光が石を包み込み、ふわりと石が浮く。
だんだんと灰色だった石が緑を帯びてきた。
ここで集中が途切れると、始めからやり直しになってしまう。じっくりと時間をかけて、魔法石を作り上げていく。
カッ
しばらく経つと、いっそう強い光が石から発せられた。
かつんと音をたてて机の上に落ちたのは、若草色の美しい石――魔法石だった。
リンは嬉しそうに言った。
『やったね、日向』
「そうだね」
『もっと嬉しそうにしなよ!』
リンはぷくぅっと頬を膨らませた。
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