ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.157 )
日時: 2022/05/29 16:10
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: l2ywbLxw)

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「いってきまーす」

 わたしは制服に着替えて、ほうきをもって外へ出た。いつものように、おもしろそうにキドが、心配そうにモナがついてくる。

「ましろ! また今度ぼくも乗せてニャ!」
「ゆっくり飛ぶのよ? 焦っちゃだめよ?」

「わかってるから!」

 わかってるけど、いつも跳ね上がっちゃうの!
 わたしは気合いをいれて、ほうきにまたがり、魔力をこめる。

「と、【飛んでくださいおねがいします】!」

 びゅーん!!

「きゃあああああっ!」

 またやっちゃったあああ!!

 わたしの体はくるくるとまわる。上下左右に動く地面の上で、キドがきゃっきゃとわらい、モナがおもいため息をついているのがなんとか見えた。
 もちろんわたしの目がいいからじゃない。毎日のことだから、わかっただけだ。

 三十秒ほど空中遊泳をほうきに強制されたあと、ようやく飛行が安定した。

『ねえ、真白? 何回言えばわかるのかな。精霊にはもっと高圧的な呪文の方が効果的なんだって。じゃないとどんどんつけあがるんだからさ、あいつらは』

 わたしの肩に、ナギーが乗った。ナギーはわたしがくるくる飛んでいる間、自分は少し離れたところに避難して、可笑しそうにけらけら笑っていたのだ。
 いつものことだけど。

「でも、癖なんだもん」

 わたしはナギーがいる右肩の反対方向を見た。ナギーの意地悪そうなくせになんでも見透かしそうな琥珀色の目が、わたしは少し、苦手なのだ。

 なのにナギーは、きらきらと金粉を振り撒く黄色の羽をパタパタと動かして、わたしの目の前に来た。瞳と羽の色とは対照的な紫色の髪が、さらりと風に揺られる。

「ま、それでおもしろがって空間精霊が寄ってくるから、魔力の乏しい真白にも、かろうじて魔法が使えるんだけどな。かろうじて」

 ぐぅ……。二回言わなくてもいいじゃん! わざわざ!

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