ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.158 )
- 日時: 2022/05/29 16:12
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: l2ywbLxw)
4
「ぶっ」
わたしの顔に、大きな赤いなにかが飛んできた。
『あーあー、だから気を付けろって言ったのに』
そう言いつつ、ナギーは葉っぱをどけてくれた。
ありがとうとお礼を言ったあとに、わたしは言い訳をする。
「だって、まさか葉っぱが飛んでくるなんておもわなかったもん」
『事実、飛んできたじゃねえか』
「うぐっ」
飛んできたのは、通常よりも三回りほど大きな紅葉。わたしの顔より少し大きいくらいかな。
そしてその方向には、バケガクが誇る『四季の樹』。春には桜を咲かせ、夏にはまぶしい新緑の色をつけ、秋には紅葉の海をつくる。冬には枯れるのかと思うとそれはちがって、幹は雪のような白銀に染まり、枝には葉っぱの代わりに半透明な白色の丸い実が垂れる。
その実がなんなのかは、学園長先生以外、誰もしらないそうだ。
『真白はドジなんだから』
「わかってるよ!」
『ドジを自覚してるのか。それはそれで悲しいやつだな』
「ううう……」
『で、いつまで飛んでるんだよ。いつ墜落するかわからないんだから、そろそろ降りた方が良いんじゃねえの?』
「……」
わたしは無言で地上に降りた。もともと高い場所を飛んでいたわけではない(そんなことはこわくてできない)ので、『たいして』苦労せずに、地面に足がつく。
「おっとと」
すこし足元がぐらついて、よろめく。
くすくすと笑う声が、四方八方から聞こえる。いや、わたしの自意識過剰なのかもしれないけれど。単に楽しくおしゃべりしているだけかも。
でも。
わたしはチョンと、自分の胸につけてあるリボンに触れた。
リボンやネクタイは、体育の授業とかの例外を除いて、常につけておかなければならない。なんでだろ、とは思うけど、そんなことを聞く勇気もない。
「はあ」
ため息を小さく吐いて、わたしは学園の正門へと歩みを進めた。
5 >>159