ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.159 )
- 日時: 2021/06/19 07:54
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: Z.r45Ran)
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「真白さん、おはよう」
「あっ、お、おはようございます」
教室に向かう途中で、笹木野さんに声をかけられた。
笹木野さんはにこりと笑って、わたしの横を通りすぎた。歩くスピードが結構早い。
『あの一件』以来も、笹木野さんたちはなんの変わりもなく、わたしに接してくれている。
東さん以外。
笹木野さんはいまみたいににこやかに挨拶してくれるし、花園さんは用事がなければ目も合わせてくれない。他のお二人とは教室のある館がちがうので、あまり会わないけど、スナタさんは会えば手を振ってくれる。
東さんには、……嫌われたみたいで、あからさまに無視される。
でもそれは仕方のないことだし、むしろ、普段通りに接してくれる三人の方がわたしは不思議だ。
特に、笹木野さん。
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ぱあんっ!!
その日の三時間目。浮遊魔法による魔法のコントロール力のテストが近づいていて、今日は各自でその練習をしていた。
一分間、拳サイズの石を、左右一センチの範囲内に収めて浮かし続けることが出来れば合格。そのため、生徒は二人一組でペアを組んで、片方が練習、片方が時間を計る、これを交互に繰り返していた。
「きゃあっ」
「わあっ!」
突然飛んできた石の欠片に、みんなが驚く。わたしは破裂を起こした人から離れていて、破片は届かなかったけど、それでもわたしもビックリした。
それを起こした張本人は、見なくてもわかる。実際には、気になってみてしまったけど。
石を割ってしまう人はたまにいるけど、あんなに細かく、散り散りに、わたしのところには届かなかったとはいえ長距離に破片を飛ばせるのは、少なくとも、このクラスには一人しかいない。
破片による怪我人は出なかった。これは、この『魔法実習室』にかけられた、こういうときに発動する【強制魔法解除】の効果もあるといえばあると思う。
けれど、あの人はその魔法の効果すらも上回る魔法力を持っているらしく、あまり意味はない。
だから本当の、被害がでなかった理由は、飛んだ破片一つ一つを、瞬時に笹木野さんが魔法で人に当たってしまわないよう、コントロールしたからだ。
「花園さん! またですか!」
担任のターシャ先生が、花園さんに駆け寄った。
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