ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.160 )
日時: 2021/06/11 21:46
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: j4S7OPQG)

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「あぶな、くはないですね。笹木野さん、ありがとうございます」

 ターシャ先生は笹木野さんにそう言うと、確認のため、周囲の床を見回し、他の生徒に、足元に注意するよう促した。

「花園さん、あなたが魔法の制御が苦手なのはわかっていますが、もう少し気をつけてください」

 花園さんは、保有魔力がとてつもなく多いらしい。ただ、その多すぎる魔力を制御しきれずに、時折魔力爆発を引き起こしてしまうんだとか。
 だから、花園さんは、大量の魔力を爆発的に消費する魔法が得意らしい。

「努力は、しました」

 反省した様子のない花園さんが、ターシャ先生に言う。ターシャ先生は頭を抱え込まんばかりに唸った。

「今日の放課後、残ってください。先生と臨時の二者面談をしましょう」

 ため息をこらえたような声だった。

 クスクス……

 ふと、かぼそい笑い声が聞こえた。
 その声はいわゆる『性格が明るい人』たちから聞こえてきていた。女の子も、男の子も、笑っている。

 こわい。

「また二者面談だってよ」
「いくらⅤグループだからって、ねえ?」

 こわい。

「なあ、お前ら。よく本人の前で言えるよな」

 笹木野さんが、ヒソヒソと話していたグループの目の前に、にこにこと笑いながら立っていた。

 こわいよ。すっごくわらってるよ。黒いオーラが見えるよ。

「知ってるか? 魔法が使えない種族は、魔法が使えない代わりに、五感なんかが発達してるんだよ。だからさ、お前らの会話、全部聞こえてるんだよな」

 なにも言わないグループの人たちに構わず、笹木野さんは続ける。

「次やったら脳みその中身全部外に出すからな」

 そうやって一度に言うと、笑みを崩さずに、さっさと去って行って、そしてまた、花園さんとの実習を始めた。

 笹木野さんが魔法を使うことが出来るのは、いわゆる『突然変異』で、種族としては、本来、魔法は使えないらしい。
 だから、魔法も使えるし、感覚も鋭いんだって。

 ……ずるい。

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