ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.162 )
- 日時: 2021/06/19 08:00
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: Z.r45Ran)
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「我々が使う魔法に属性があるのは、もう皆さんご存知のことかと思います」
いまは五限目の、魔法座学自然魔法科の授業だ。担当教師であるリーシャ・ダレオス先生が、教卓に立って、教科書を持って、話している。
ターシャ先生とは姉妹だそうで、それで二人は、下の名前で呼ばれることが多い。わたしも「リーシャ先生」と呼んでいる。
顔立ちもよく似ていて、優しげな垂れた緑色の右目の縁にある涙ボクロがチャーミングだ。
ただ、雰囲気は少し違っていて、ターシャ先生はほんわかしていて、リーシャ先生はなんだか、薄い膜を張っている感じがした。
昔、二人はドラゴンハンターだったという噂がある。それについては二人とも明言していないが、否定もしていない。
噂によると、ターシャ先生が攻撃、リーシャ先生が防御担当だったそうだ。
女性らしい体型の二人からは、全く想像出来ない。
豊かな黒髪をまとめることなく背中に広げ、なのに邪魔そうな素振りは見せない。邪魔じゃないからまとめないんだろうとは思うけど。
ゆったりとした薄い桃色のワンピースは、大人の女性だと着こなせる人は少ないと思うけど、リーシャ先生はすごく似合っている。
ほんと、何歳なんだろう。
五限目はお弁当を食べたあとで、さらにこの季節は秋のそよ風が教室に心地よく吹いていることもあり、ついうとうとしてしまう。
「しかし、この四大属性+二属性による魔法の区別の概念は、我々魔族が定めたもので、神がお決めになったものではありません」
魔族? 魔族って、なんだっけ。
わたしは寝ぼけた目で、教科書を見た。
えっと、魔族、まぞく。
教科書の後ろにある索引から調べて、その言葉が載っているページを探す。
あ、あった。
『魔族とは、神より魔法を与えられた種族全般を指す言葉である。天陽族や魔物を含む、この世界のほとんどの種族が魔族に分類される。ただし、魔力を持たない一部の人間族や、聖力を使う天使族や精霊族等は、非魔族に分類される』
教科書にも、『天陽族』の言葉がある。
そっか、そうだよね。大陸ファーストの中で一番多い種族だもん。有名だよね。
このバケガクには、あまりいないけど。そういえば、花園さんも天陽族だったっけ。全然イメージ無いなあ。
「神々が用いていた魔法の種類ははとても単純で、【白魔法】と【黒魔法】の二つです。現代では【光魔法】と【闇魔法】の別名として使われていますが、古代では違いました」
「先生!」
ロスタイアさんが挙手した。どうしたんだろう?
「はい、なんでしょう?」
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