ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.165 )
日時: 2022/05/30 06:42
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: wtNNRlal)

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 えっと、何の話をしてたんだっけ?
 ああ、そうそう。

「それで、花園さんがね」
「結局その話はするのね」

 モナがジャンプしてわたしよりも少しだけ小さいタンスに飛び乗り、呆れたように言った。

「?」
「ううん。いいの。なに?」

 わたしは腑に落ちないところはあったけど、聞いても教えてくれなさそうだったので、そのまま話した。

「今日、三時間目に【浮遊魔法】の実習があってね、握り拳くらいの大きさの石を浮かせるっていうのをやったの。
 そしたらね、花園さんがパアンッ! って石を破裂させちゃって」
「ちょっと待って」

 待つも何も、ここで言葉を切るつもりだったのにな。
 それはともかく、どうしたんだろう。

「石を、破裂? パアン?」
「う、うん」

 モナが普段見ないほどの驚きの表情を顔に浮かべていた。

「細かいのだと、石の破片は砂粒くらいのもあったよ。足元にちょっとだけ飛んできたの」

 そうだ、笹木野さんのことも話してみよう。

「それでね、その破片を笹木野さんが全部魔法で回収したの。足元に飛んできたやつも、ふよふよ飛んでったの」

 それでわたしはその足元の砂粒が、花園さんが粉々にした石の一部だということがわかったのだ。

「全部? 砂粒まで細かくなったものを?」

 その言葉は疑問の音が付いてはいれど、わたしに向けられたものではないようだった。

「信じられない。いえ、ましろが言うのなら本当なんだろうけど」
「どうしたの?」
「ええ?」

 モナとわたしの目が、数秒交わる。

「ああ、そっか、そうだったわね。ましろはちょっと知識が……」

 モナはそこで言葉を濁した。バツの悪そうな顔をして、わたしから目を逸らす。

「そこで止めても遅いよ!
 いいよいいよ。どうせわたしは馬鹿だよーだ」
「ごめんごめん。悪気はなかったのよ」
「それはわかってるけどさ」

 わたしがむすっとしたままでいたけれど、モナが下を向いて、なんだかしゅんとしていたので、すぐに気持ちを収めた。

「それで、どうしたの?」

 モナが顔を上げて、かすかに見開いた目をわたしに向けた。
 そして、話しだす。

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