ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.168 )
- 日時: 2021/06/17 06:07
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: 8S3KaQGB)
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「魔法というものは、発動されてからその効果が完全に消えるまで、常に『周波』と呼ばれるものを出してるの。魔力の波みたいなもの、かしら。
この波が一定であるほど魔法は効力を発しやすくなって、この波が不安定であるほど魔法は効力を発しにくくなるの。ちなみに、そんな不安定な周波のことを、『ノイズ』って言うのよ。
魔法の得手不得手は、こういった周波の安定の度合いが関係しているの。
そして、安定した周波を持つ魔法を『魔法の純度が高い』、そういう魔法を放てる魔力を『魔力濃度が高い』と言うの」
うーん、なるほど?
「まあ、この辺は『専門』と呼ばれる知識も含むから、無理に理解する必要は無いわ」
そっか、良かった。
「だからと言って、一分後に全てを忘れるのはだめよ。一般知識にだって触れながら話したんだから」
「さ、流石にそこまで忘れやすくないよ!」
「どうかしらねえ」
モナが意地悪に言った。
「もう! いいから、続きを話してよ!」
「はいはい」
そして、モナの声が再び真剣なものへと変わる。
「でもね、魔力濃度は高すぎても問題なの。
確かに、魔力濃度が高ければ高いほど、魔法は世界に馴染みやすい。それは安定した周期を精霊が好むからなんだけど、魔力濃度が高すぎると、精霊が集まりすぎてしまうの。
精霊が及ぼす干渉力に物体が耐えきれなくなってしまって、物体が爆発してしまうの。
ああ、そうそう。この場合の爆発と、魔力爆発は、また別物よ。この説明は省くけど。この場合はただの爆発」
へえ、そうなんだ。
「ちなみに、魔力濃度が高い人は、精霊が集まりすぎないように【周波】をコントロールする必要があるの。その【周波】をコントロールする為に『張る』ものを【フィルター】と呼ぶの。これによってほんの少し【ノイズ】を生じさせることで、調節するのね。
この【フィルター】が張れるようになるには、特殊な訓練が必要なの。
まあ、これは予備知識だから、覚えなくてもいいわ」
特殊な、訓練。
確か花園さんは、ご家族から『ネグレクト』を受けていたって。
そっか。花園さんが上手く魔法を使えないのは、そういう事情があったんだ。
「でもそんな、爆発するなんて状況には滅多にならないの。ただ魔力濃度が濃いというだけで、物体が爆発してしまうほどの精霊は集まらない。
稀にだけど、精霊が寄りやすい体質の人がいるのね? そういう人だと考えられないこともないけど、そもそも物体が爆発してしまうのは、大きすぎる干渉力によって物体が崩れてしまうのを、ギリギリまで抑えるせいなの。本来なら、ぼろぼろになって崩れ落ちるだけに収まるのよ」
ふむふむ。
『努力は、しました』
わたしは、花園さんの言葉を思い出した。
そっか、あの言葉は、そういう意味だったのか。
「だから、この場合に起きる爆発には条件があるの。『魔力濃度が高いこと』、『精霊に好かれやすい体質であること』、それから、物体の破壊を抑える『【状態維持】を使い続けること』、ね。でも、【状態維持】が使える人が魔力の調整が出来ないなんてことはまず無いの」
え、そうなの?
「【状態維持】というのは、物体の全方向から『破壊を抑制する力』をかけ続けることなの。
そんなに器用なことが出来るなら、【フィルター】を張る訓練を受けていなくても、『ものは慣れ』で独学で出来る人がほとんどなのよ」
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