ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.169 )
日時: 2021/06/18 08:07
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: bxqtOE.R)

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 結構長い話だったな。もう、大半を忘れちゃった。
 窓を見ると、空はまだ赤みは帯びてはいれど、もうほとんどが闇に呑まれようとしていた。

「難しい話は終わったニャ?」

 ドアの向こうで、キドの声がした。

「あ、うん。おわったよ!
 いま開けるね」

 わたしはそう言いながら立ち上がって、部屋のドアを開けた。
 するとそこには、くたびれた顔をしたキドがいた。

「どうしたの?」
「扉越しから聞こえてくる言葉でも、モナの話は難しいニャ」

 あー、なるほど。そうだね。

「ましろだって、疲れた顔してるニャ」
「え? あ、ははは」

 モナからため息をつきたそうな雰囲気が伝わり、わたしは笑ってごまかした。

「真白、今日、おばあさんが自分の帰りが遅いから、先にご飯を食べて寝るようにって言ってたわ」

 え、そうなんだ。
 そっか。

 ちょっと、寂しいな。

「ましろ? どうしたニャ?」

 キドからそう言われて、わたしはハッとした。

「う、ううん! 大丈夫」

 そう。わたしは大丈夫だ。
 だって、キドや、モナがいる。
 家に帰れば、二人が、いや、二匹が? 待ってくれている。

 わたしは、独りぼっちじゃない。

 そう思っていたとき。

 ドンドンドンドンドン!!!

 家の玄関のドアが、強い力で、思いっきり、叩かれた。

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