ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.172 )
日時: 2021/06/20 07:55
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: JSwWcgga)

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「むりってなにニャ! 諦めるのニャ?!」
「そうじゃないわ! でも、無理なものは無理なの!
 キド、誰か呼んできて! 近くの村から! 早く!」

 キドは少しためらったあと、「わかったニャ!」と言って、姿を消した。

 キドの得意魔法は、【簡易瞬間移動】。『物体をすりぬける魔法』と『移動速度を上げる魔法』を同時に使うことによって、まるで一瞬で移動したかのように見える魔法。
 移動時間は本当に一瞬だから、その姿を視界に捉えられることもほとんどない。

「真白、しっかりして!」

 キドがいなくなると、今度はモナがこちらへ来た。

「も、な」

「! よかった、意識はあるのね!
 お願い、頑張って! こらえて! 出来る?」

 こらえる、なにを?

「こら、える?」

「自分の力でその場に踏みとどまるの! 少しだけでもいいから!」

 少しで、いいの?
 でも、体に力が入らないよ。

「キドが帰ってくるまででいいの!」

 モナは必死にわたしに言うけれど、わたしはそれに応えられない。

「お願い、真白!」

 わたしの体は、もう、外へと続くドアの前にあった。

 わたしはドアノブに手をかけて。

 ゆっくり、それを回した。

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