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ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.181 )
- 日時: 2021/06/27 10:03
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: 8uCE87u6)
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『邪魔しちゃったね。続きをどうぞ、真白?』
「う、うん」
ナギーに促され、わたしは花園さんに言葉を掛ける。
「花園さん」
下がもつれそうになりながら、わたしは、言った。
「わたしと、友達になってください」
すると。
花園さんの表情に、急激な変化があった。
まず、顔から血の色が失せた。もともと白い肌が、淡い青を帯びる。
次に、わたしから顔を背け、右手で口元を抑えた。まるで吐き気を懸命に堪えているかのように。
「ふーっ、ふーっ、ふーっ」
細い指の隙間から、浅く荒い息が漏れる。
な、なに?
わたしは何が何だかわからなくて、ナギーに助けを求める目を向けた。けれどナギーはじっと花園さんを見るだけで、わたしの方は見ない。
「はな、ぞのさん?」
「いや」
その声は、いつもの淡白な音ではなかった。
普段よりも僅かに高く、そして震えた、『人間らしい』声。
「トモダチは」
わたしは自分の存在すらも忘れて、目の前の状況に見入っていた。
花園さんとは思えない『人間』が、突如そこに現れたことが、わたしに驚き以外の何の感情も抱くことを許さなかったのだ。
「真白さん」
けれど、その時間はほんの数秒だった。
肩に手を置かれ、わたしの意識はわたしの中へ帰る。
声の主は、男性らしかった。大きく少し硬い手が、わたしの左肩を、強く、掴んでいた。
「なにしてんの?」
その人物が、わたしの背後から顔をのぞかせる。笑っている。でも、確実に、怒っている。わたしはいままでの彼の行動から、そう答えを導き出した。
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