ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.183 )
日時: 2021/06/28 17:28
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: w4lZuq26)

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 その日の放課後も、わたしは終始落ち込んでいた。心なしか、空気もよどんで感じられ、視界も霞んで見える。体調が悪い訳では無いけど、気分が悪い。ちょっと、気持ち悪い。

『真白、元気出しなよ。ちゃんと伝えただけ偉いよ?』

 ナギーはそうやってはげましてくれるけど、なんだか心がこもっていないような気がして、あまりなぐさめにはなっていなかった。

『それに、あの二人も気にしてないみたいだよ? 女の子の方は真白にそもそも興味がなかったし、男の子の方も、きっと前から仮面を被ってただけなんだろうね』
「そんなのわかってるよ!」

 わたしはちょっと怒って、ナギーに言った。こんなの八つ当たりに近いとわかってるけど、だからと言って、それで感情を抑えられれば苦労しない。

「どうせわたしはあの人たちにとってなんの価値もない存在だもの! そんなのわかってる!」

 なんとなくその場に居たくなくて、わたしは乱暴に通学鞄とほうきを掴んで、教室の出口へ向かった。
 わたしの席は前から四列目の、教卓から見て中央より少し右に寄ったあたり。机の群衆をくねくねと進み、開いたままのドアから、一歩を踏み出した。

「えっ?」
「うわっ」

 とにかく外へ出ることを意識し過ぎて、廊下を走っていた男の子に気づかなかった。

 わたしと男の子は激突しなかった。男の子は瞬時に床を蹴って、わたしから見て右へ飛んだ。

 しかし、わたしはそんなこと出来ない。

「ふぎゃぅ!」

 わたしは盛大に、その場でこけた。

『真白、大丈夫?』

 ナギーの声がした。

「う、うん、なんとか」

 そう言いながら起き上がるわたしに、男の子は言った。

「なんだよ、危ないなあ」

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