ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.184 )
- 日時: 2021/06/29 18:28
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: v2BiiJyf)
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えっ?!
ちゃんと前を見てなかったわたしも悪いけど、廊下を走ってた男の子だって悪いんじゃないの?
言葉には出さないものの、わたしは呆気に取られていた。
そして、男の子の姿をまともに見た途端、別の意味で、わたしは呆気に取られた。
すごい、美少年。
わたしは顔がいい人を好きになるようなタイプではないけれど、目を奪われたりするくらいはある。いまが、それだ。
夕日のオレンジ色を反射するように、まるで金粉を振りまいているように輝く金髪。
目は桃色だけど、とても濃い、深い、それでいて透き通ったような透明感のある色。それは一種の宝石にも感じられた。
目鼻立ちはすごく整っていて、でも気後れするようなものではない。どこか少年のあどけなさを感じさせ、むしろ親しみやすいような雰囲気をまとっている。
背はわたしと同じくらい、かな。わたしは年齢の割には背が低い方なので、年下かな。いや、他種族だったらその限りではないのか。
ネクタイの色は、紫。わたしの一つ上の、IVグループだ。
「あ、あの、すみませ」
「ごめんなさい、大丈夫でしたか?」
「へっ?」
男の子はわたしに駆け寄り、わたしの身体を見る。
え、なになに。さっきのややドスの効いた声はわたしの聞き間違い? 声音がいい人そのものになってる。
「すみません、先輩に失礼なことをしてしまって、ほんと、申し訳ないです。
急いでいたもので、ちゃんと前を見ていなくて」
深々と頭を下げる男の子を見て、わたしはしばらく停止していたけれど、ナギーに服の裾を引っ張られて、我に返った。
「大丈夫です! 頭を上げてください!」
生徒の大半はもう下校しているとはいえ、まだ人影は多い。それなりに注目を集めてしまっているし、もう遅い気もするけど、あまり目立ちたくない。
そのことを察してくれたのか、男の子は顔を上げた。
『名前聞いときな。何も無いとは思うけど、一応』
ナギーから言われて、わたしは男の子に名前を尋ねる。
「あの、名前を教えてもらってもいいですか?
わたしは、真白です」
すると男の子はハッとした表情をし、慌てて名乗った。
「失礼しました。ボクは花園 朝日です」
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