ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.185 )
日時: 2021/06/30 21:45
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: LIyXzI4u)

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 はな、ぞの?
 花園、朝日?
 なんだか、すごく聞き覚えのあるなま……

 あ。

 花園日向。
 花園朝日。

 苗字は同じだし、日向と朝日って名前も似てる。両方とも、太陽に関連する言葉だ。
 瞳の色は違うけど、髪の色は同じ。
 それにさっき、わたしのこと『先輩』って呼んだ。なら、年はともかく、下級生。下級生はこのかんに用事は滅多にないはず。でもこの教室には、花園さんがいる。

 そして過去の新聞記事に、花園さんには弟がいるって、書いていたような気がする。
 ということは。

「もしかして、花園さんの」
「しっ! あまり言わないように姉から言われているんです!」

 男の子、えっと、朝日くんって呼んでいいのかな? 朝日くんは人差し指を口の前に立て、わたしの言葉を遮る。わたしは無言でこくこく頷いて、それに応えた。

 黙っているよう言ったということは、つまり、そういうことだ。

「さっきのことは、後日お詫びをさせていただきます。本当にすみませんでした」

 朝日くんはもう一度、今度は浅く、頭を下げた。

 それから教室の中を見て、その端正な顔をしかめた。

「逃げたな」

 そうぽつりと声を漏らす。

「逃げた?」
「あ、いえ。こっちの話です
 では、姉もいないようなので、失礼します」

 朝日くんはそう優しく微笑んで、立ち去った。

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