ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.186 )
日時: 2021/07/01 18:15
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: sLuITfo7)

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「お帰りなさい、真白。キドはいまお昼寝してるわ」

 今日はモナがひとりで出迎えてくれた。

「ただいま、モナ」

 モナは首を傾げた。

「なにかあったの?」
「え、どうして? 何も無いよ」

 問いに問いで返したわたしに、モナは「うーん」と唸りながら言う。

「落ち込んだような、嬉しいような、変な匂いがするの。真逆の感情が混じったみたいな、匂い」
「ええっ?!」

 落ち込んだ、というのは身に覚えがある。今朝の出来事以外にありえない。でも、嬉しいって、なに? 今日は特に何もない、いつも通りの日常だったのに。

『あー、それ、あれだ。落ち込んでるのは今朝、真白がヘマやって、花園日向……よりかは笹木野龍馬を怒らせたんだよ。
 そんで嬉しいのは、今日の放課後、年下っぽい顔の良い男子生徒と話したから。
 だろ?』
「ふええ?! ちがうちがう! えっと、いや」
「あら、真白に好きな人でも出来たの?」
「ちがうって!」
『そうなんじゃねえの?』
「だから、ちがうって!」

「うるさいニャー!!」

 キドの怒声が響いた。
 見ると、ドアの向こうで、毛を逆立てたキドの姿があった。

「せっかく気持ちよく寝てたのにニャ! ひどいニャひどいニャ!」

「わああ! ごめん、キド!」

 キドは昼寝の邪魔をされるのが大嫌いなのだ。
 唯一大声を上げていたわたしは、その後ひたすらキドに頭を下げ、長年貯め続けたお小遣いの一部をキドのおもちゃを買うのに使うと約束した。
 キドは「いいのを買ってほしいニャ」と言ったけど、モナが怒って止めた。

「ただでさえ少ないお小遣いをキドの昼寝なんかに使ってもらえるだけありがたいと思いなさい!」

 らしい。

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