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ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.19 )
- 日時: 2021/06/21 18:35
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: HDoKOx/N)
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魔法実技の授業が始まった。出席番号順に行われるので、私は十八番目だ。
リュウは比較的始めの方に行う。出席番号は、確か六番だっけ。
「次、六番、笹木野 龍馬」
合ってた。
今回の魔法実技では、用意された的に魔法を当てられるかどうかで成績がつけられる。的は円で、中央に赤い丸がある。その丸を中心とする同心円状の円が書かれていて、赤い丸から離れるほど評価は下がる。
リュウは深呼吸をした。左手に魔法石を、右手を的に向け、呪文を唱える。
「アクア・アスク」
リュウの右手から針のように細い水が放たれた。
ヒュッ
的に小さな穴が空いた。無駄な亀裂などは一切ない、画鋲で壁を刺したようなきれいな穴だ。
赤い円のその中央に魔法は命中した。見事なコントロールだ。しかし、魔法が地味すぎたせいか拍手は起こらなかった。
だけど。
バキバキバキバキッ
数百メートルは離れているはずの森の木々が、突然大きな音をたてて倒れた。それはちょうどリュウが前を向いている方向で、かつ、リュウが魔法を放った方向だった。
「あ、いけねえ」
リュウが頭をかいた。それから何故か私のところへ来た。意味はなさそうだ。
「もうちょっと的が丈夫だと思ったんだけどな」
「なに言い訳してるの」
「ははは」
「森が怒る」
ライカ先生はポカーンとしていた。無理もない。リュウが放った魔法は、C級とはいえ威力は弱い方で、学者によってはD級とも言われる程度のものだ。それを森を破壊するほどの魔法として放つのは、魔法使いの中でも[魔術師]と呼ばれる魔法のスペシャリストくらいのものだ。
「先生、すみません」
リュウが言うと、ライカ先生は慌てて言った。
「い、いえ。大丈夫よ。じゃあ、笹木野くんはA評価ね」
「ありがとうございます」
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