ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.190 )
- 日時: 2021/07/04 10:58
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: 6MRlB86t)
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「あの、先輩」
校門が見えてきた辺りで、朝日くんが言った。
なんとなく言い辛そうに、モジモジしている。
「今日のお昼休みか放課後、会えたりしませんか?」
「ええっ?!」
『真白! 断れ!』
すかさずナギーが言う。
「迷惑、ですよね」
わたしの罪悪感を加速させるような表情で、朝日くんはうつむく。そんな顔をされると、わたしは何も言えなくなるよ。
断らなきゃ、断らなきゃ、ことわら……
『おいお前!』
朝日くんに姿を見せたらしいナギーが、朝日くんに向かって言った。
『なんかお前隠してるだろ! 真白に関わりたいなら、腹の中見せてからにしろ!』
すると朝日くんは一瞬だけぽかんとして、すぐにナギーに手を伸ばした。
「わあ、先輩の契約精霊ですか?! 性別の異なる精霊と契約するって、珍しいんじゃないですか?
綺麗な髪と目と羽だなあ! もしかしなくても補色? 紫色と黄色って補色だよね? 美しいなあ! あ、これは黄色と言うよりも琥珀色かな?」
ナギーをがしりと両手に収め、もともと宝石のように輝く瞳を、さらにキラキラさせてナギーを凝視する。
「えと、精霊が好きなの?」
急に人が変わったように話す朝日くんに呆気に取られつつ、わたしは尋ねた。
「はい! 姉の影響で」
姉、というときの朝日くんの表情は、とろけるように幸せそうで、それなのに、どこかかすかに狂気を感じるような笑みだった。
「ボクの契約精霊はビリキナっていうんです。あまりそばにいるときはないんですけど、機会があればまた紹介しますね! ちょっと変わってるやつですけど」
もごもごと叫ぶナギーを右手に包み、朝日くんが言う。
「あの、それで、どうですか? 今日、会えますか?」
ついさっきまでの行動が恥ずかしく思えたのか、ほんのり頬を赤くして(しかしナギーは離さない)、わたしに再度尋ねる。
「え、あ、うん、大丈夫」
そう言った直後、ナギーがものすごい顔で睨みつけていることに気づいた。
あっ、しまった、つい!
「やったあ!! じゃあお昼に本館の屋上で待ってますね! お昼ご一緒しましょ!」
ちょうど校門に着いたところで、朝日くんはナギーを解放し、本館、第一館に向かって走っていった。
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