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ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.191 )
- 日時: 2021/07/04 14:06
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: FX8aUA2f)
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『真白さどうして受け入れちゃったわけどう考えても急に豹変しすぎだったでしょ演技に決まってるでしょあんなのどうしてわかんないかなまったくもう』
昼休みに第一館の屋上に向かう道中も、ナギーはわたしに延々と嫌味を言っていた。散々忠告したわたしにそれを無視され、挙句朝日くんに羽交い締めされたおかげで、ナギーの不機嫌度は最高潮だった。
『まあ、人がいいのは真白の長所だからね。欠点でもあるけど』
「ごめんなさい」
何回謝ったことだろう。二桁いっててもおかしくないと思う。
『それにしても、やっぱりあいつ、おかしいよ。かなり強引に真白を誘ったでしょ? なんか企んでるよ、絶対』
そうなの、かな。わたしには、ただのいい人に見えるけど。
姉に両親を殺された人にしては、全然暗くないし、むしろ明るくて、雰囲気もなんだか幼くて、弟って感じがする。
いや、まあ、姉に両親を殺されたのに普通過ぎるっていうのも、それはそれで不気味ではあるけれど。
それに、「姉」って言った時のあの表情。親の仇に向ける表情ではない気がする。昨日も花園さんを教室まで探しに来たみたいだし。きっと、花園さんのことが大好きなんだろうな。
そこまで考えて、わたしはとある考えが浮かんだ。
やっぱり、《白眼の親殺し》は本当じゃないんだ。花園さんが人殺しっていうのも、でまかせなんだ。
そう思うと、足が軽くなった。なんだ、そうなんだ、そっか。
わたしは少し気分良く、朝日くんの待つ屋上への扉を押し開けた。
ぎいっ
やや錆び付いた扉が、不快な金属音をたてて重々しく開く。秋の心地よく冷えた風が校舎に吹き込む。
「先輩!」
満面の笑みを浮かべた朝日くんが、わたしに駆け寄った。
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