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ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.195 )
- 日時: 2021/07/09 22:03
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: 9AGFDH0G)
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朝日くんはにこにこと笑って、元気に言った。
「どうぞ!」
わたしたちは横並びにペンチに腰かけていた。朝日くんが肩から提げていた鞄から、お弁当箱を取り出して、わたしに渡す。
「作ってきました!」
「えっ?! そんな、悪いよ!」
「先輩に倒れて欲しくないので。
あ、それとも、ボクの料理は食べたくないですか?」
上目遣いでこちらを見る朝日くんに、わたしは罪悪感を膨らませた。
うーん、食べようかな、いや、でも、うーん。
正直に言うと、すごく食べたい。朝日くんは「中身見せますね!」と言ってお弁当箱の蓋を開けている。
真っ赤なプチトマトにぷりぷりした卵焼き。きゅうりのサラダに輝く白米、そしてメインディッシュなのであろう二つのミニハンバーグ。
「こんな定番のものですみません。先輩の好みがわからなかったので、とりあえず万人受けしそうなものを作ってきたんです。トマトはあまり人気がないみたいですけど」
わたしは好き嫌いがない。食べられるものを食べられるときに食べる。好きだとか嫌いだとか、そんなことは言ってられないのだ。
そしてあさひくんのお弁当は、単純に、美味しそう。
というか、料理上手なんだね。わたしより上手い。なんか、複雑。
「えへへ、やっぱり、いらないですかね。ボクなんかの……」
朝日くんはそう言いながら、お弁当箱を鞄に仕舞おうとする。
「え、あ、食べる!」
わたしは咄嗟にそう言ってしまった。あ、と気づいた時にはもう遅い。次会った時、ナギーに色々言われるんだろうなあ。
でも。
わたしは、朝日くんの心の底から嬉しそうなこの笑顔を見ていると、なんだかとても、幸せな気分になるのだった。
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