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ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.197 )
- 日時: 2021/07/10 11:51
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: Di8TedTz)
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「でも、これはなんの鱗なの?」
「竜です」
「りゅっ?!」
なんでもないことのように朝日くんは言うけれど、確か竜の鱗は高級品だったはず。竜は『神の使い』と呼ばれるほどの伝説的な生き物で、『一度でもその姿を見れたなら、その人の一生は幸福に包まれるだろう』なんて言い伝えもあるほど。ちなみにドラゴンハンターは『堕竜』と呼ばれる下界人に災いをもたらすであろうと予想される竜しか狩ってはいけないとされている。これは国際法で定められているけれど、破る人も多いってモナが言ってた。
それは、竜の鱗は守護の力を、堕竜の鱗は破滅の力を持つとされ、堕竜の鱗よりも竜の鱗の方が貴族の人達が買いたがるんだって。
「あ、違いますよ! これは買ったんじゃなくて、竜にわけてもらったんです!」
わけてもらった?
ということは、朝日くんは竜にあったことがあるの?
「内緒ですよ。竜と関わったことのある奴なんて、ボクくらい……」
朝日くんは不自然なところで言葉を切った。
けれどそれは極一瞬のことで、すぐに言葉を続ける。
「なので、これは二人だけの秘密です。お守り代わりに服の下にでも隠して持っていてください」
秘密。
そのたった三文字の言葉がやけにわたしの心に絡みついて、やけに甘く感じて。それはまるで、蜂蜜のようだった。
「ボク、いつもここで食べているので、気が向いたら来てください。先輩が来るまで、本でも読んで待ってますから」
朝日くんは鞄から、カバーがかけられた本を取り出した。本が入っていたんだ。
「うん。えと、それじゃあ」
わたしは自分の頬が緩むのを自覚した。
「またね」
またね。次に会おうねという、約束。
朝日くんは、とても優しげな笑顔で、頷いた。
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