ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.20 )
日時: 2021/04/03 20:07
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: XURzUbRL)

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「次、十八番、花園 日向」
 私の番が来た。
『わくわくするね』
 リンが無邪気に笑う。私は返事をせずに指定された立ち位置に立った。Ⅴグループである私は、みんなよりも的に十メートル近い位置から魔法を放つ。
「ウインド」
 ふわあと頬を風が撫でる。心地のよい暖かなそよ風が、グラウンドを通り抜けた。
「花園さん、C評価」
「ありがとうございました」
 あまりにも呆気なく終わったので、リンは開いた口を塞がないまま言った。
『え、日向、終わり?』
「うん」
『ええっ?! もっとすごい魔法使わないの? たくさん魔力込めたでしょう?』
「いいの」
 そんなことをしても、なんの利益も生まれない。
 私は彼らが生きてさえいれば、世界すら、どうなろうと構わないのだから。
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「あー、終わった終わった」
「疲れたの?」
「いいや、まさか」
「うん」
 リュウがあの程度で疲れを感じるわけがない。
『ねえ、日向。どうしてあの魔法にしたの? あれじゃ的に当たったかどうか分からないわ』
 リンはまだあの魔法のことについて文句を言っていた。
「成績が下がるだけ。問題ない」
『あの先生を見返そうよ!』
 私はため息をいて、リンを見た。
「意味がない」
 それだけ言って、私は腕を組み、目を閉じた。
 話すのは疲れる。もういいや。
「ついたら起こすよ」
 リュウのその言葉を聞きながら、私は意識を落とした。

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