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ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.200 )
- 日時: 2021/07/11 22:10
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: KS1.rBE0)
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あれ?
わたしはふと、とあることに気がついた。その疑問を問おうと思ったほぼ同時に、スナタさんが質問した。
「日向、朝日くんと一緒に住んでるの?」
確か二人は例の事件がきっかけで、離れて暮らしていたそうな。さっきの話といい寂しげな朝日くんの表情といい、てっきりいまも別の家に住んでいると思ってたんだけど。
「おじいちゃんとおばあちゃんが亡くなったから」
!
な、くなった? じゃあ、二人の家族はもう、二人だけになったんだ。
「あっ、そうなんだ、えと、あの」
「気にしなくていい」
スナタさんが申し訳なさそうに縮んでいるのを、花園さんがなだめた。そう言う花園さんの表情は、少しだけ、ほんの少しだけ、悲しそうだった。
お祖父さんとお祖母さんには、大事にしてもらっていたのかな。
「私の弟である朝日を受け入れてくれる親戚なんていなかったし、それよりもまず朝日が他の家に行くことを拒否したの。これ以上無理をさせるのも嫌だったから」
「だって、あいつら嫌いだもん。姉ちゃんの悪口ばっかり言ってるし」
むすっとしつつも甘えた声で、朝日くんが花園さんに言う。花園さんが朝日くんの頭を撫でた。朝日くんは幸せそうに、にへへ、と笑う。さっきまでの暗い雰囲気が嘘のようだ。
やっぱり、朝日くんの中では、わたしよりも花園さんの方が上なんだな。いや、わかっていたことだけど。朝日くんが花園さんのことを大好きなのは、話している中でもわかる。
でも。
胸が痛い。この気持ちは何? チクチクして気持ち悪い。苦しい。これは、何なの?
わたしは胸に手を当てて、服越しに朝日くんから貰った竜の鱗のペンダントを強く握りしめた。
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