ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.201 )
- 日時: 2021/07/12 15:02
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: KS1.rBE0)
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「真白、なんだか変な臭いするわよ」
家に着いて唐突に、モナがわたしにそう言った。眉間にしわを寄せて、不快そうに顔をしかめている。
「ええっ?!」
お風呂には毎日ちゃんと入っているし、今日は汗をかくような出来事もなかった。体に臭いがつくことはないはずなのに!
「うん、するニャ。ましろ、なにかあったニャ?」
キドが首を傾げた。その声音は心配そうで、わたしはそのことに違和感を覚えた。
「ごめんなさい、真白。言い方が悪かったわね。私が言った『臭い』は『オーラ』のようなもののことなの。嫌な『気』を真白から感じる。何か変なものが取り憑いているんじゃないかしら?
最近調子が悪いとか、体に異常があったことってない?」
体に異常? うーん。
わたしはしばらく考えた。腕を組んでそれっぽい格好をしながら。
「そういえば、なんだかよく胸がチクチク痛むようになったの。それくらいかな?」
「それってどんなとき?」
「えっと、最近朝日くんとお昼一緒してるって言ったことあるでしょ? 昼休みが終わって朝日くんとさよならするときとか、あと今日、花園さんが屋上に来てね、朝日くんが花園さんにべったりだったの。それを見たときも痛かったかな」
すると、鋭かったモナの眼光がふっと緩み、代わりにキラキラとした光が宿った。そしてそれから、にやにやと笑い始める。
え、なに?
「真白、それって『嫉妬』じゃない?」
「しっとぉぉおおおおおお?!」
自分の口から信じられないくらい大きな声が出て、わたしは思わず口を抑えた。
「どうしたんだい真白。大きな声を出して」
今日は早めに帰ってきていたらしいおばあちゃんが、ひょこっと顔をのぞかせる。
「なっ、なんでもない!」
わたしは慌てて自分の部屋に駆け込み、ぴしゃんとドアを閉めた。
なのに、部屋にはしれっとモナがいた。さすがモナ。羨ましいくらい動きが早い。
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