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ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.205 )
- 日時: 2021/07/16 20:39
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: EjFgzOZO)
3
「真白さん」
教室に戻ると、花園さんが待ち構えていた。表情は見たことがないほど真剣で、それでいてどことなく焦っているようにも見えた。
え、なに?
「放課後、話したいことがあるの。残れる?」
「な、何を話すんですか?」
こんなこと、いままでなかった。いま起こっていることがなんだか異常に思えて、わたしは思わず竜の鱗のペンダントを握りしめた。
花園さんは顔をしかめて、言った。
「聞きたいことがある」
は? なんで?
わたしの心に、黒い炎が灯った。その炎は体中に広がり、そして蝕む。
話の内容も告げずに、自分の都合だけで勝手に言って。
こんなもの、断ってしまえばいい。
「嫌」
ぶっきらぼうにそう言うと、花園さんは予想だにしない行動をした。
「お願いします」
あろうことかわたしに敬語を使い、そして、その華奢な腰を折ったのだ。教室の端で、笹木野さんが驚愕しているのが見える。そして、慌てて花園さんに駆け寄ってくるのも。その笹木野さんの行動が注目を集め、教室にいた大半の生徒の目が花園さんに、『わたし』に向く。
先程とはまた違った感情が、体の奥から噴き出してくる。熱を持った『核』がじわりじわりと体を温めていく。これは、きっと、
優越感、だ。
笹木野さんとしかまともに話すらしない花園さんが、クラス一の劣等生であるわたしに頭を下げている。そのことがたまらなく……あれ、なんだろう。この感情の名前は、なんだろう。
まあ、いいや。
口元がわたしの意思に関係なく歪む。嬉しくて楽しくてたまらない。いや、違う。この感情はそんなものじゃない。もっと、上の、『何か』。
「わかりました」
今度は打って変わって肯定の言葉を返したわたしを、花園さんは、ほっとしたような雰囲気を纏わせた。
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